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2020年9月6日に発生した宮崎県椎葉村下福良の斜面崩壊地の地質

2020年9月9日:更新
2020年9月8日:開設

地質情報研究部門:斎藤 眞

 2020年台風10号による豪雨によって9月6日夜に宮崎県東臼杵郡(椎葉村しいばそん)(下福良しもふくら)(鹿野遊かなすび)で斜面崩壊が発生しました(図1、2)。

 この地域の地質は四万十帯の白亜紀付加体からなっています。四万十帯は、西南日本の太平洋側の白亜紀~新第三紀初頭の付加体(*)とそれらを覆う地層が分布する「地帯」のことです。九州では四万十帯に分布する白亜紀付加体を(諸塚もろつか)層群と呼び、構造的上位で前期白亜紀~後期白亜紀初頭の付加年代をもつ(佐伯さいき)亜層群と構造的下位で後期白亜紀の付加年代を持つ(蒲江かまえ)亜層群に区分されます。

 本地域は、佐伯亜層群の付加体からなり、構造的上位から(銚子笠ちょうしがさ)ユニット、(不土野ふどの)ユニット、(上椎葉かみしいば)ユニットに区分されます。このうち構造的上位の銚子笠ユニット、不土野ユニットの年代は前期白亜紀後半のアプチアン期~アルビアン期で、構造的下位の上椎葉ユニットの年代は後期白亜紀初頭のセノマニアン期です。また銚子笠ユニット、上椎葉ユニットは砂岩が卓越するのに対し、不土野ユニットは厚い頁岩が分布し、岩相が異なっています。

 今回崩壊が発生した部分には、不土野ユニットの頁岩が分布しています。この頁岩は板状に割れやすい性質を持っており、風化・侵食に弱いことが知られています。

*付加体:プレート(一般には海洋プレート)の沈みによって、その上の地層・岩石が、沈み込まれる側(一般には大陸プレート)の前面に付け加わってできる複雑な地層のこと。衝上断層が発達し、メランジュと呼ばれる混沌とした地層もしばしば見られる。先に付加したものの下側に衝上断層を介して次の付加体ができるので、衝上断層の上側の地層の方が古いという特徴がある。


図1 椎葉村と地質図(図2)の位置。地理院地図に加筆。

図1 椎葉村と地質図(図2)の位置。地理院地図に加筆。

図2 崩壊地の位置と地質。5万分の1地質図幅「椎葉村」(斎藤ほか、1996)に加筆。
図2 崩壊地の位置と地質.5万分の1地質図幅「椎葉村」(斎藤ほか 、1996)に加筆。[凡例]

図2 崩壊地の位置と地質.5万分の1地質図幅「椎葉村」(斎藤ほか、1996)に加筆。

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参考文献

斎藤 眞・木村克己・内藤一樹・酒井 彰(1996) 椎葉村地域の地質.地域地質研究報告( 5万分の1地質図幅), 地質調査所,133p.

 

更新履歴

  • 2020年9月9日:地質図Naviで表示のURL修正
  • 2020年9月8日:開設

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター