土砂災害研究情報 トップへ
平成25年10月16日台風26号の豪雨による
伊豆大島西部で発生した斜面崩壊の地質学的背景(速報)
平成25年10月18日開設
平成25年10月16日未明の台風26号の豪雨により、伊豆大島西部で斜面崩壊が発生し、大島町元町地区に甚大な被害を与えました。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた方々に謹んでお見舞いを申し上げます。
斜面崩壊地周辺の地質概説
伊豆大島は火山島であり、最近では1986年に噴火するなど、日本列島の中でも活動的な火山です(図1)。島では歴史時代に繰り返し噴火が起こり、土砂災害が発生した大島町元町地区は、14世紀(西暦1338年頃と推定)の噴火で流れ出た溶岩流(図2;Y5L)の上につくられた街です。
今回の豪雨によって崩壊した斜面は、約1,300-1,500年前のカルデラ壁外縁にあたり伊豆大島の中でも急な傾斜を持ちます。ここはまた、14世紀の噴火によって割れ目火口が生じた地域でもあります(図3)。その14世紀の噴火で流れ出た溶岩流の上を、その後に噴き出し、降り積もったスコリア*1 や火山灰が、数mほどの厚さで覆っています(図2;Y5C)。そのような地域で斜面崩壊が発生しました。
(図をクリックすると大きなサイズで表示されます。)
(図をクリックすると大きなサイズで表示されます。)
図3 現地からの報道映像より判読した主な斜面崩壊による土砂移動の範囲(ピンク色で塗色)。14世紀の噴火口(割れ目噴火)を赤線で示す(最近の研究進展により図2の位置とは若干異なる)。斜面崩壊による土砂移動の範囲は速報結果であり、今後の調査の進展により修正・変更されうる。(図をクリックすると大きなサイズで表示されます。)
今回発生した斜面崩壊と土砂移動の特徴
斜面崩壊が発生した地域には、急傾斜地に14世紀の噴火以降に堆積した未固結な火山噴出物が厚く重なっています。また現地からの報道映像を踏まえると、斜面崩壊による土砂移動は、谷沿いのみならず小さな尾根を含めた斜面全域で起こっています。これらから、今回発生した斜面崩壊と土砂移動は、急斜面の表層をつくる未固結な火山噴出物が記録的な豪雨によって水に飽和し流れ下ったことによると考えられます。
関連出版物
産総研地質調査総合センターでは、火山噴火に対する防災計画や火山周辺の土地の利用計画に資する目的で、特に活動的な火山の形成史と噴火履歴をとりまとめ、火山地質図として発行しています。今回、土砂災害が発生した伊豆大島に関しては、1998年に2万5千分の1スケールの火山地質図を発行しています(図1:川辺,1998)。
URL; https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/izuoshima/index.html
地質情報研究部門 火山活動研究グループ
- *1 火山噴火で放出される岩石破片のうち、気泡が多く黒っぽいもの。同様に白っぽいものは軽石。
- 地震・津波研究情報
- 火山研究情報
- 土砂災害研究情報
- その他の地質災害研究情報