2022年度第2回 地質調査研修終了報告

 島根県出雲市長尾鼻周辺(小伊津海岸)を中心に、10月24日(月)〜10月28日(金)の4泊5日の日程で地質調査研修を実施しました。講師は産総研地質調査総合センターの利光誠一が務め、金子翔平がこれを補佐して研修を進めました。
 参加者は6名で、地質調査について少し経験のある方を対象とした募集でしたが、地質図作成の経験があまりない方も参加されていました。調査実習の対象地域の地質は、日本海拡大期に堆積した泥岩・火砕岩など(前期–中期中新世の成相寺層)と日本海拡大直後に堆積した砂岩泥岩互層(中期中新世の牛切層)、そして牛切層に貫入した後期中新世–前期鮮新世の火成岩体です。研修期間中は連日、昼間に野外での地質調査を行い、夜間に2時間あまりの座学で地質図を作成するための一連の基本的事項の講義と各自の調査データの整理および地質図作成実習を行いました。

[研修概要]

10月24日:
小伊津海岸において調査実習地の概要説明と地層観察の後、地層の走向傾斜の測定指導。各自の歩幅の計測。/ 地質調査の概要の講義と粒度表作成実習。
10月25日:
歩測と簡易的なルートマップ作成の練習。砂岩泥岩互層の地質柱状図作成と粒度表を用いた砂岩の粒度観察、砂岩層下底面に見られる流痕の観察と古流向の測定。貫入岩と砂岩層の接触部の観察と分布調査。/ 地質調査における観察点と記載方法、地質図の見方に関する講義と、調査データの整理。
10月26日:
貫入岩の分布調査と注意点の説明、火砕岩の観察と分布調査。/ 研修3日目までの調査データの整理、地層境界の作図実習と予測(翌日の調査計画立案)。地層境界等の作図のための説明。
10月27日:
泥岩・火砕岩・砂岩の分布調査、沢筋での調査と注意点の説明。牛切層最下部の砂岩層の西方延長地点での岩相の観察と地層の上下判定。/ 調査データの整理と地質図の作成作業。質問を受けながら、地層分布図作成に関わる説明。
10月28日:
当地域における地質調査研修の理解を深めるための関連地層・岩石などの巡検(火成岩・火砕岩の産状・構造等の観察)。

 今回は、出雲市での対面研修の前に、事前学習としてe-ラーニングでのビデオ視聴を取り入れました。ビデオ視聴が終わった方には、事前課題を出題して解いていただくことにしました。そして本研修の前週にリモートレクチャーを行い、事前課題の解法を説明しました。出雲市の調査実習地で取得したデータを例にして、地質図学を用いて地質図にしていく作業工程も、事前のe-ラーニングに取り入れました。
 出雲市での研修では、初日と2日目に断続的に雨が降りましたが、雨の合間をぬって、ほぼ予定通りのスケジュールで進めることができました。上述したように、あまり本格的な地質調査をしたことのない方も含まれていたため、地質調査に必要な露頭位置の確認や岩相の識別などの基礎的なところから実習しました。そして研修で一通りの調査経験を積みながら、地質図作成に取り組みました。3日目・4日目夜のデータとりまとめ作業では、e-ラーニングでも視聴した地質図作成工程説明の紙資料を配布して、それを参考にしながら地質図を作成していただきました。短い対面の研修日程の中ではありましたが、地質図を完成に近いところまで進んだ方が何名かいました。このため、研修参加の皆さんに研修終了後も自宅などで引き続き地質図作成に取り組まれるようお伝えし、地質図作成に関わる作業を終えました。また、今回、調査実習地の一部の立体地形模型を準備したところ、参加者には研修の理解の助けになると好評でした。
 本研修の実施にあたり、島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク推進協議会の後援をいただき、研修地の地元の方々にも大変お世話になりました。地質調査総合センターおよび地質標本館からの各種助言や教材提供などもいただき、本研修参加者の理解増進に役立てることができました。地質情報研究部門の兼子尚知氏には、3Dプリンターで調査実習地の地形模型を作成していただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

2022年度第2回 地質調査研修
2022年度第2回 地質調査研修
2022年度第2回 地質調査研修
2022年度第2回 地質調査研修

2022年度第2回地質調査研修

日程 2022年10月24日(月)-10月28日(金)
補備日程 事前のe-ラーニング(約100分)を受講の上で、上記研修開催日の前週(10月17日〜21日の内の1日)にリモートレクチャー(約20分)を予定
研修場所 島根県出雲市長尾鼻周辺(小伊津海岸)
地質:中期中新世の牛切層の堆積岩など
研修内容 最近はルートマップを描いたことがあっても地質図を作成した経験のない方、地層や岩石の見方に不安がある方など、地質調査の基本である踏査に関し、大学で充分な経験が積めなかった方もいらっしゃいます。また、大学等で地質調査や地質図作成の実習経験があっても、しばらく本格的な調査から遠ざかっていた方もいらっしゃいます。この研修では、地層・岩石の観察ポイントからまとめまで、地質図を作成するための基本的事項を5日間の野外実習と座学・室内作業で習得します。少人数でマンツーマンに近い形での研修となります。
※今回は、大学・会社等で地質図を1回くらいは作成したことのある経験者向けの内容で行う予定です。ふるってお申し込み下さい。
定員 定員 6名(最小催行人数:4名)※募集終了
講師 利光誠一博士
地質調査総合センターにおいて、多くの地質図幅の作成を行い、白亜紀大型化石、層序の研究を行うと共に、地質標本館館長として、地質学の普及に努めてきました。
他1名
集合 ホテル(出雲市駅前) 10/24 13時
解散 ホテル(出雲市駅前) 10/28 16時
CPD 42単位(事前のe-ラーニング等と合わせて42単位になるよう、時間を調整して指導を行います)
参加費 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に63口(1口1000円)の会費が必要です。
注意事項 現地までの交通費と宿泊代(4泊)・食事代は参加者負担となります。朝食付き6000円台(税込)/1泊の宿を予定しています。
参加には傷害保険等への加入をお願いします。お勤めの方は労災保険の対象となるよう職務として参加してください。
学生・院生の方で参加されたい場合は、別途お問い合わせください。
新型コロナウイルスワクチン接種(年齢等に応じた適切な回数)済みであること、または接種できない方は研修直前に抗原検査等により陰性であることを求めます。
新型コロナウイルス感染防止の対策は行いますが、情勢を踏まえ、中止とさせていただく場合もございます。
申し込み・
問い合わせ
training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。
主催

産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」 運営会則(pdf:76KB)

後援

島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク推進協議会