2021年度第2回 地質調査研修終了報告
島根県出雲市長尾鼻周辺(小伊津海岸)を中心に、10月25日〜10月29日の4泊5日の日程で地質調査研修を実施しました。講師は産総研の利光誠一が務め、遠山知亜紀がこれを補佐して研修を進めました。
参加者は4名で、地質調査について少し経験のある方を対象とした募集でしたが、地質図作成の経験があまりない方も参加されていました。調査実習の対象地域の地質は、日本海拡大期に堆積した泥岩・火砕岩など(前期–中期中新世の成相寺層)と日本海拡大直後に堆積した砂岩泥岩互層(中期中新世の牛切層)、そして牛切層に貫入した後期中新世–前期鮮新世の火成岩体です。研修期間中は連日、昼間に野外での地質調査を行い、夜間に3時間程度の座学で地質図を作成するための一連の基本的事項の講義と各自の調査データの整理および地質図作成実習を行いました。
[研修概要]
- 10月25日:
- 小伊津海岸において実習地の概要説明と地層観察の後、地層の走向傾斜の測定指導。/ 地質調査の概要の講義と粒度表作成実習、岩石標本の観察実習。
- 10月26日:
- 歩測と簡易的なルートマップ作成の練習。クリノメーターを用いて離れたところにある物の高さ(崖の高さなどを想定)を測定する実習。砂岩泥岩互層の地質柱状図作成と粒度表を用いた砂岩の粒度観察、砂岩層下底面に見られる流痕の観察と古流向の測定。貫入岩と砂岩層の接触部の観察と分布調査。/ 地質調査における観察点と記載方法、地質図の見方に関する講義と、調査データの整理、岩石標本の観察実習。
- 10月27日:
- 貫入岩の分布調査と注意点の説明、火砕岩の観察と分布調査。/ 研修3日目までの調査データから地層境界等の作図のための講義と調査データの整理、地層境界の作図実習と予測(翌日の調査計画立案)。
- 10月28日:
- 泥岩・火砕岩・砂岩の分布調査、沢筋での調査と注意点の説明。牛切層最下部の砂岩層の西方延長地点での岩相の観察と地層の上下判定。/ 貫入火成岩体・火砕岩・砂岩・泥岩等の地層分布図作成に関わる講義と地質図の作成。
- 10月29日:
- 当地域における地質調査研修の理解を深めるための関連地層・岩石などの巡検(火成岩・火砕岩の産状・構造等の観察)。
上述したように、あまり本格的な地質調査をしたことのない方も含まれていたため、地質調査で必要な露頭位置の確認や岩相の識別などの基礎的なところから実習しました。そして研修で一通りの調査経験を積みながら、地質図作成に取り組みました。各自で観察して得た調査データから地質図にしていく作業では、資料として事前に用意していた地質図作成のための工程説明書を参考にして取り組みました。結果として、この研修期間内に地質図を完成できた方はいませんでしたが、その前段階となる地層境界線を引く作業まで進めることができました。研修終了後も自宅などで引き続き地質図作成に取り組まれるようお伝えし、研修を終えました。
本研修の実施にあたり、島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク推進協議会の後援をいただき、研修地の地元の方々にも大変お世話になりました。地質調査総合センターおよび地質標本館からの各種助言や教材提供などもいただき、本研修参加者の理解増進に役立てることができました。この場をお借りして御礼申し上げます。
2021年度第2回地質調査研修
日程 | 2021年10月25日(月)-10月29日(金)※申し込み締め切り:10月8日(金) |
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研修場所 | 島根県出雲市長尾鼻周辺(小伊津海岸) 地質:中期中新世の牛切層の堆積岩など |
研修内容 | 最近はルートマップを書いたことがあっても地質図を書いた経験のない方、岩石の見方に不安がある方など、地質調査の基本である踏査に関し、大学で充分な経験が積めなかった方もいらっしゃいます。この研修では、まず室内で岩石の見方等を理解した上で、野外での地層・岩石の観察ポイントからまとめまで、地質図を作成するための基本的事項を5日間の研修で習得します。少人数でマンツーマンに近い形での研修となります。 ※今回は、大学・会社等で地質図を1回くらいは書いたことのある経験者向けの内容で行う予定です。ふるってお申し込み下さい。
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定員 | 定員 6名(最小催行人数:4名) |
講師 | 利光誠一博士 地質調査総合センターにおいて、多くの地質図幅の作成を行い、白亜紀大型化石、層序の研究を行うと共に、地質標本館館長として、地質学の普及に努めてきました。 他1名 |
集合 | ホテル(出雲市駅前) 10/25 13時 |
解散 | ホテル(出雲市駅前) 10/29 16時 |
CPD | 40単位 (40単位になるよう、時間を調整して指導を行います) |
参加費 | 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に60口(1口1000円)の会費が必要です。 |
注意事項 | お勤めの方は労災保険の対象となるよう職務として参加してください。 現地までの交通費と宿泊代(4泊)・食事代は参加者負担となります。朝食付き6000円台(税込)/1泊の宿を予定しています。 参加には別途傷害保険をおすすめします。 学生・院生の方で参加されたい場合は、別途お問い合わせください。 新型コロナウイルス感染防止の対策は行いますが、情勢を踏まえ、中止とさせていただく場合もございます。 |
申し込み・ 問い合わせ |
training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。 |
主催 | |
後援 |
島根半島・宍道湖中海(国引き)ジオパーク推進協議会 |