GSJ Open-file Report no.416

三宅島ヘリ観測記録:2003年1月〜12月分

観測者(著者):
川辺禎久・宮城磯治・下司信夫・東宮昭彦・篠原宏志・須藤茂・小栗和清
産業技術総合研究所・地質調査総合センター

まとめ: 宮城磯治
産業技術総合研究所・地質調査総合センター

観測者と観測日のリスト:

川辺禎久  1月9日,2月19日,5月1日,5月27日,7月29日,8月5日,12月16日
宮城磯治  2月25日,4月23日,9月16日,10月30日
下司信夫  1月22日,7月9日
東宮昭彦  8月20日
篠原宏志  5月21日
須藤茂     3月4日
小栗和清   4月9日

観測日、観測者、概要

2003年12月16日 (川辺@地調) 上空の視程は非常に良好。 噴煙は間欠的。白煙の塊が高度約900-1100m程度まで上昇。 午前は三池-サタドー岬方向よりに、午後は空港南方向に流される。 やや強い北西風のため、カルデラ内は噴煙が巻いて良く見えず。 主火口は噴煙のためによく見えず(赤外温度観測は150℃以上)。 噴煙量は最近の観察時と同程度。主火口の北西側の噴気がやや活発か。 カルデラ底の状況は、12月2日の観察時と比べて大きな変化はなし。 崖錐の発達は続いているが、成長はやや鈍っている模様。 カルデラ縁も特に大規模な崩落はない。

2003年10月30日 (宮城@地調) 白色噴煙。山頂から200-300m程度にコンスタントに上昇(但し脈動あり)。 北東の風に流され島を出る前に白色部分は消滅。 陥没カルデラ内、スオウ穴直下の崖錐成長が継続。 池は、前回よりやや拡大。色は赤褐色を主体とする。 それ以外、大きな変化は認められず。 COSPEC観測中、噴煙の風下を飛行中に感じた火山ガス臭は、 硫化水素の臭いは弱く、亜硫酸ガスや塩化水素臭がやや強め。 山麓部、特に大きな変化はなし。

2003年9月16日 (宮城@地調) 白色噴煙。その到達高度は500m以上(山頂部を覆う雲底) 約1400m以下(島雲の最高高度)である。 噴煙は南西に流される。 青白いガスを、島の西南西(錆ケ浜方面)〜 西(阿古方面やや北より)で確認。 3ヶ月振りに火口内を観察できた。スオウ穴直下では崖錐の成長が継続。 池の色は、赤褐色を主体とし、川辺氏による5月27日の報告とは異なる。 主火孔の西がわにある噴気孔周辺に、黄色い(硫黄)昇華物。 その他、主火孔周辺に大きな変化は認められず。 山麓部は、特に大きな変化はなし。山頂付近と東山麓では植生の回復が遅れる。

2003年8月20日 (東宮@地調) 山頂に雲がかかり、カルデラ内は見えず、噴煙の到達高度も不明。 噴煙及びガスは主に南東の上空(三宅島空港方面)と、西南西の低空(阿古方面)に流れる。 COSPEC観測を5マイル沖で時計周りに半周(東→南→西)行なった。 島内各所で泥流対策工事が着々と進んでいる模様。

2003年8月5日 (川辺@地調) 天候はよいが視程は悪い。 山頂部には雲がかかり、スオウ穴からカルデラ内部が見えた程度。 噴煙に大きな変化はなし。 噴煙は主に北側火口から噴出している模様、量はやや多めで、 高度は雲のため不明。火山ガスは三七山方向へ流れる。

2003年7月29日 (川辺@地調) 山頂部には雲がかかり、内部の観察は不可能。 時々カルデラ縁が見え隠れする程度で、噴煙の様子もわからず。 南風に流され、火山ガススオウ穴付近から明治噴火の火口列に沿って流れ下る。

2003年7月9日 (下司@地調) 標高約400mより上は雲に覆われ、山腹上部や山頂火口は観測できず。 噴煙は密雲を突き抜けて約1500mまで上昇。 量は最近では多め。火山ガスは主に南西の阿古側へ流れる。

2003年5月27日 (川辺@地調) 南東の弱風(10ノット以下)。噴煙は雲底1000m程度の雲に突入。 白色噴煙。量は最近では多め。 主火口内北端、北側火口中央、南側火口のうち、北側火口中央が最も活発。 温度は130℃以上(過小見積りである)。 火山ガスは主に北西側に流れるものの、広い範囲に拡散。 カルデラ内、南西の壁が崩落(地震計の記録より、5月24日09:34と20:53ころ と思われる)。 岩屑は3月の北東崩落の岩屑を覆い、カルデラ底中ほどに到達。 この崩落により南西カルデラ縁の長さ100mほどが約10m後退し、 黒池の2/3が埋没。

2003年5月21日 (篠原@地調) 木更津からヘリ観測(CO2観測)行う。 三宅の山頂付近のみ時々雲がかかる程度のほぼ快晴。 風は北北東で弱い(数m/s)。 噴煙は1200m程度まで上昇して南南西へ。 火口内はよく見えましたが・・・とくに変化なし。

2003年5月1日 (川辺@地調) 白色噴煙(全く見えない時間が長い)。 勢いはなく、 ときおりプリューム状にカルデラ縁上空200m程度がやっと。 火山ガスは北東風に流され、阿古方面へ。 主火口内部が非常によく見えた。 白色噴煙と青白色の火山ガスは北側火口から出ている。 赤外による火口温度は最高335℃(気象庁)。 南側竪穴状火口の底は岩塊で敷き詰められ、 深さは目測でカルデラ床と同じ(標高250m)程度。 スオウ穴西のでっぱりはきれいに崩落してなくなった。 崩壊物の流走距離は約600m程度(Height/Length比は1.5程度)。 この崩壊物で新北池はほとんど埋没し、中央池も東半分が埋まった。 これ以外の地形の大きな変化はなし。

2003年4月23日 (宮城@地調) 白色噴煙、高さはカルデラリムから2-300m程度、 約10mの南〜南南西の風で北に流れる。 青白色ガスも同方向の山麓〜沿岸に流下。 スオウ穴直下では、崖錐が成長し、池の面積も縮小。 主火孔周辺に大きな変化は認められず。 赤外での火口内最高温度は192℃(過小評価の可能性あり;気象庁)。 火口内の池は、西側を除いて全て赤茶色。 山麓周縁部、火山ガスの影響が少ないと思われる地区では、 樹々に緑色がめだつ。

2003年4月9日 (小栗@地調) 噴煙は傘雲のため(雲底700-800m)確認できず。 上空の風は300°35knot。 カルデラ内は噴煙が立ちこめ主火口はほとんど見えず。 スオウ穴は茶色く濁り、カルデラ内の東側の池は赤く南側は青黒い。 青白いガスは確認できず。 赤外による火口温度は165度(過小評価;気象庁)。 カルデラ壁のスオウ穴西側にあった出っ張りが3/20,17:56に崩壊したらしい。 崩落した岩屑が火口底の池をいくらか埋めていた。

2003年3月4日 (須藤@地調) 白色噴煙、火口縁から200m程度に上昇。ヘリの窓を開けた際に強い刺激臭。 曇り、北西の風15ノット。 火口地形等に特に大きな変化は認められず。 火口内最高温度は255度C(気象庁)。

2003年2月25日 (宮城@地調) 白色噴煙。高度は山頂カルデラリムから2-300m(午前);700m(午後)。 三宅島上空2500フィートの風は北北東、14ノット。 たなびく噴煙の下に青白いミストがはっきり確認できた。 カルデラ内、前回(2002年11月13日)に比べ、主火孔の噴煙量が多い。 火口内の池、水位や面積に大きな変化はなし。

2003年2月19日 (川辺@地調) 白色噴煙、北火口全面と南火口の北側半分で特に多く、高度は雲中のため不明。 北寄りの風がやや強く、気温が低く、雲底は800-900m程度。 新澪池・新鼻方向で強いH2S,SO4臭。 カルデラ内、南西崖錐がやや成長。大きな変化はなし。 水たまりの水位はやや高め。

2003年1月22日 (下司@地調) 強い西風。白色噴煙は、陥没カルデラ内を風上側に流された後、 外に出て、カルデラ東側縁付近で消滅。数分間隔で塊状の噴煙が上昇。 噴煙平均高度は、火口縁上200m。ガスミストが少量ただよう。 カルデラ底に顕著な変化はなし。 主火口南側の竪穴火孔底を目視。岩塊で埋まり、 その間から盛んに噴気がでる。噴気量は、同北側火口のほうがずっと多い。 気象庁による温度測定(熱赤外)の最高温度は、258℃。

2003年1月9日 (川辺@地調) 曇りがち。高層は弱い西風、低層は弱い北東風。 午前の観測:雲のため山頂部は観察不能。 白色噴煙。カルデラ縁から300m程度まで上昇。火口直上では量が多いが、 流れるとすぐに消滅。 青白いガス、霞と区別できない程度の少なさ(大路池沖合いで硫黄臭あり)。 午後の観測:主火口内部は噴煙が多くよく見えず。 他の個所からの噴気量も多いが、これも低気温のためか。 2002年10月16日と比べ、スオウ穴下の崖錐に大きな変化はない模様。 西側の崖錐はやや大きくなっている。リムは目測で5-10mほど後退か。 陥没カルデラ内の水たまり、大きな変化はなし。 西側の通称“黒池”は緑色。


GSJ Open-file Report no.416

If you have any questions about this page, contactIsoji MIYAGI