解説を見る
典型的には、硫黄と金属元素(鉄・銅・鉛など)の化合物、すなわち硫化物である鉱物(例:黄鉄鉱 FeS2、黄銅鉱 CuFeS2)。硫化物での硫黄の役割をセレン、テルル、砒素、アンチモン、ビスマスがつとめる化合物も、硫化鉱物に分類されます(例:砒鉄鉱 FeAs2)。半金属である砒素、アンチモン、ビスマスを含む硫化鉱物のうち、これら元素(記号Xで代表)と硫黄が結びついたXS3が構造単位となり、これと金属が結びつく結晶化学的特性を持つ鉱物グループを「硫塩鉱物」と細分することがあります。硫化鉱物は一般的にメタリックな外見で、重く、不透明です。硫化鉱物には銅、亜鉛、銀、モリブデンなど重要な金属の資源鉱物が数多く含まれています。
酸素の化合物である鉱物。酸素は唯一の陰イオンとして、そのパッキングが鉱物の構造を決めています。酸素の役割を水酸イオンOH-が担う水酸化鉱物も、酸化鉱物のグループに分類されます。炭酸塩鉱物なども酸素を含みますが、そちらの鉱物での酸素は炭酸イオンなど原子のグループからなる陰イオンを形成したうえで鉱物の構造を造るため、結晶化学的性質は酸化鉱物とは全く異なります。酸化鉱物には資源鉱物として重要な赤鉄鉱(Fe2O3)、磁鉄鉱(Fe3O4)、チタン鉄鉱(FeTiO3)など、メタリックな外見で不透明なものもあれば、自然の造形美の代表である水晶(石英SiO2の自形結晶)や貴重な宝石であるルビーやサファイア(鉱物としてはともにコランダムAl2O3)のような透明度の高い鉱物もあります。酸化鉱物は硬度の高いものが多いですが、水酸化鉱物はその限りではありません。
それぞれ、燐酸イオンPO43-、砒酸イオンAsO43-、バナジン酸イオンVO42-を、構造を造る陰イオンとして持つ鉱物。結晶化学的な構造単位がともに5価の陽イオンと4個の酸素からなる陰イオングループであり、結晶構造が共通する例があることから、近縁の鉱物とみなされています(例:緑鉛鉱 Pb5(PO4)3Cl、ミメット鉱 Pb5(AsO4)3Cl、バナジン鉛鉱Pb5(VO4)3Cl、いずれも六方晶系)。ただしバナジン酸塩鉱物では、VO42-が互いに重合していたものが結晶化学的構造単位になるという、燐酸塩鉱物や砒酸塩鉱物と違う特性があることも知られています。いずれも姿かたちの美しい鉱物であることが多く、鉱物分類展示には欠かせません。
珪素は地球表層に存在する元素の中で酸素に次いで多量であり、このため珪酸塩鉱物は地球上で見かける鉱物としてとびぬけて豊富です。珪酸塩鉱物の構造の基本は、1個の珪素を4個の酸素が正四面体形に囲む陰イオンSiO44-(以下、SiO4四面体とする)です。SiO4四面体はしばしば重合して、複雑な構造の陰イオングループとなり、それが金属イオンと結びつくことで、多様な珪酸塩鉱物が形作られています。このため珪酸塩鉱物は、SiO4四面体の重合の様式によってさらに細分されています(ネソ珪酸塩鉱物、ソロ珪酸塩鉱物、サイクロ珪酸塩鉱物、イノ珪酸塩鉱物、フィロ珪酸塩鉱物、テクト珪酸塩鉱物)。珪酸塩鉱物は岩石(普通の「石」)を作る鉱物です。中学校から高校の理科で岩石を学習するときに出会う「かんらん石」「輝石」「雲母」などは、みな珪酸塩鉱物です。珪酸塩鉱物は色ガラスのような見かけと質感で、透明なものが多く、また、そこそこ硬い鉱物です。
2個の頂点を共有したSiO4四面体が多数つながる、鎖のような構造を持つ珪酸塩鉱物のグループです。「イノ」とはギリシャ語で「鎖」という意味です。SiO4四面体が1列つながったものは、陰イオングループとしてSi6O64-となり、もっとも簡単なこの鎖1本の構造である鉱物の代表が輝石族です(例:透輝石 CaMgSi2O6、ひすい輝石NaAlSi2O6)。鎖が2本横につながった二重鎖構造(陰イオングループとしてSi4O116-)の代表が、角閃石族です(例:透角閃石 Ca2Mg5Si8O22(OH)2)。三重鎖構造、三重鎖と二重鎖の両方を持つ構造からなる鉱物もあります。ここで、連結する四面体の中のSiは、一部、Alに置きかえられることがあります。イノ珪酸塩鉱物は、しばしば長く伸びた柱状の結晶になります。柱の伸びの方向に割れやすい「へき開」を持つことも普通です。
「フィロ」とは、ギリシャ語で「葉片」、つまり薄くぺらぺらしたものという意味を持ちます。SiO4四面体が3個の頂点で結びつくと2次元的に無限につながって、基本式Si4O104-で表される層状構造を造ります。SiO4四面体の中のSiは、一部がAlに置きかえられることもあります。こういった層状構造を特徴とする珪酸塩鉱物のグループがフィロ珪酸塩で、雲母や粘土鉱物と総称される多くの鉱物がこのグループに属します(例:金雲母 KMg3AlSi3O10(OH)2, カオリナイト Al4Si4O10(OH)8)。SiO4四面体がつくる層の間隔は緩やかで、イオン半径の大きな金属イオンや水分子などが入りやすくなっています。層同士の結合も弱く、このため雲母に代表されるようにはがれやすいという特性があります。
「テクト」とはギリシャ語で立体構造という意味を持ち、この名を冠したテクト珪酸塩鉱物ではSiO4四面体が4個の頂点で互いに結び付いて立体的な網目状構造を造っています。完全に立体的に重合すると化学式はSiO2となり、すなわち珪酸鉱物(石英など)となりますが、珪酸鉱物は通常は酸化鉱物に分類され、第4展示室での分類展示でもそのように扱っています。テクト珪酸塩鉱物では必ず、一定の割合のSiO4四面体のSiがAlに置きかえられていて、これで発生するプラスの電荷不足を補うために金属イオンを持ちますが、網目状構造が緩やかなために半径の大きなイオンでも構造に取り込むことができます。このためテクト珪酸塩鉱物は、地殻に多いアルカリ金属を格納する鉱物として重要で、上部地殻を特徴づける鉱物ということもできます。テクト珪酸塩鉱物の代表には、長石族(例: 正長石 KAlSi3O8)と沸石族(例:方沸石 NaAlSi2O6・H2O、トムソン沸石 NaCa2Al5Si5O20・6H2O)が挙げられます。沸石族はSiO4四面体からなる網目状構造の中に大きな空隙があり、構造が壊れることなくアルカリ金属イオン、アルカリ土金属イオン、水などの分子が出入りできるという特性があります。
化石とは
- 化石とは過去の生物の体や生活の跡が地層中に埋積、保存されたものを広く指す言葉で、「石になる」ということは必ずしも条件ではありません。一般には、生物体のうち骨や殻などの硬い部分(硬組織)のみが化石として保存され易いといえます。
- 比較的新しい時代の化石、たとえば新生代第四紀の貝化石などでは殻がそのままの形で残っているものもあります。時代が古くなるにつれて生物体そのものが残ることはまれになりますが、保存状態によっては殻や内部構造が残っていることもあります。
- しかし、一般には生物体自体は溶け去り、印象のみが残っていることが多いのです。地層中で、珪酸分や石灰分が濃集して部分的に固くなったノジュールとよばれるものの中には、保存のよい化石が含まれることがあります。また、生物体が除々にほかの鉱物で置きかえられ、生物の構造が保存される例もあります。
- 特殊な場合として、植物の樹脂中に虫などがとりこまれ生息時のままで化石となっているものもあります。コハクの中の昆虫の化石などがこれに当たります。
- 化石として保存されるのは生物体中の硬組織であることがほとんどですが、軟体部が残されることもあります。また、生物体そのものでなく、足跡や棲み跡などが残されたものも化石です。生物のフンの化石はフン石(コプロライト)と呼ばれ、古生物の食性などを推定する良い材料となります。また、捕食中の生物がそのまま化石となった珍しい例もあります。
参考文献
- 青島睦治(1983)化石の世界。栃木県立博物館、107p。
- 新村 出(2008)広辞苑第6版。あ-そ。岩波書店、1624p。
- 新村 出(2008)広辞苑第6版。た-ん。岩波書店、1775p。