地質調査総合センター研究資料集 no.500

電子撮像素子で撮影された高温岩石の画像

宮城磯治 (地質調査総合センター) ・ 前嶋美紀 (まえちゃんねっと)

--

GSJ Open-file Report no.500

Images of hot rock taken with digital cameras

Isoji MIAYGI (GSJ) and Yoshinori MAEJIMA (Maechan-net)


  • T (hi)=879 deg-C
  • T (lo)=824 deg-C
  • Filename: 20090418201739.jpg
  • Device: NIKON D40, Sensitivity=ISO 1600, Lens=50.0mm
  • Exposure: Time=1.0e+01sec, Apeture=F2.0,
  • Color Space = sRGB IEC61966-2.1

概要


 暗闇で高温(300〜900℃)の岩石が放射する光を, 複数の電子撮像機器で同時に撮影し, 得られた画像を温度と撮影機材ごとにとりまとめた.

その結果,

  1. 電子撮像素子により得られた高温の岩石の画像は, 肉眼とは異なる色調を呈すること,
  2. 電子撮像素子は,肉眼では赤熱が認められない温度においても, 高温の岩石を映すこと,
  3. 赤熱した岩石の映る温度の下限や画像の色調は,撮像機器ごとに異なること,
が明らかになった.

 同等の電子撮像機器を用いて 夜間に火山の噴火映像が得られた場合には, 上記の点に注意して,本資料の画像と輝度や色調を比較することにより, 噴石等の温度測定が可能になると期待できる.

もくじ


謝辞


 赤熱した岩石を撮影するにあたり, 日本火山の会会員の3名にお世話になった. 赤司卓也氏にはキヤノン製デジタルカメラPower Shot SX10 IS による画像を提供いただいた. 伊藤隆夫氏にはソニー製デジタルビデオカメラHDR-XR520 による画像を提供いただいた. 坂井健氏にはニコン製デジタルカメラD90による画像を提供いただいた. 同じく日本火山の会の大澤晶氏には 電子撮像素子の近赤外領域の感度特性に関する知見をご教授いただいたほか, 荒川和子氏にも励ましをいただいた. 産業技術総合研究所の伊藤順一氏には, 赤熱した噴出物の映し出された2008年4月の 桜島監視カメラ画像を見ながら雑談した際に, 可視光用のデジタルカメラで温度を見積る可能性に関するヒントをいただいた. 同じく産業技術総合研究所の松島喜雄氏と風早康平氏には, それぞれ岩石の温度測定に用いた熱赤外カメラと, カメラの固定に用いた三脚を貸していただいた.

意義


 ネットワークカメラ技術の発達にともない, いくつかの火山(例えば浅間山や桜島)の周囲に設置されたデジタルカメラが 昼夜を問わず噴火活動を監視し続けるようになった. 2009年2月2日の浅間山の噴火では, 前嶋・他(2005)のウェブカメラが, 火口付近で赤く(あるいは白く)発光する噴出物を撮影した. また2008年4月頃から桜島においても, 夜間に赤熱する噴出物が放出される様子が撮影されている (国土交通省の監視カメラ). これら噴出物の温度を知ることは, 火山の活動状態を正しく把握することにつながるから, 防災上重要である.

 高温の物体が放射する光の強度やピーク波長は温度の関数であるから, デジタルカメラによって夜間に撮影された噴出物の明るさや色調から, 噴出物の温度を推定できる可能性が高い. 但しそのためには, 電子撮像素子の感度の波長依存性が肉眼とは異なる点に注意する必要がある. また,撮像原理や画像処理アルゴリズムの異なる機材で撮影された映像が, 機材ごとに映り方が異なる可能性がある点にも注意する必要がある.

 そこで, 独立に温度を測定された高温の岩石を, 複数のデジタル撮像機材で同時に撮影することにより, 機材ごとの映り方の個性を把握することを試みた.

実験方法


前準備は以下のとおりであった.

  1. 複数のデジタル撮像機器の確保
    筆者らの業務用撮影機材および私用撮影機材と, そして日本火山の会の協力により,キヤノン製EOS 5D Mark II, Power Shot SX 10 IS, EOS Kiss Digital N,ニコン製D40, D90, ミントロン製超高感度テレビカメラMTV-63V6HN, ソニー製デジタルハイビジョンビデオカメラHDR-XR520, を集めた.
  2. 岩石加熱装置
    この実験のために,内径約5cm,外径約9cm,高さ約5cmの 縦置き円筒型のガスバーナー炉を考案・製作した. 約2cm厚のセラミックファイバー製断熱層を, 0.1mm厚ステンレス製の外壁と内壁が挟む構造である. 円筒の底部には直径約2cmの切り込みがあり, この切り込みから入った 銀ろう付け等に用いる小型のブタン/プロパン混合ガスバーナーの炎が, 筒内を何度も旋回した後, 円筒の上端に載せた断熱材の隙間からに抜けることによって, 円筒炉の中央に設置した試料を効率的に加熱するよう設計されている.
  3. 近赤外光源
    赤熱した岩石との比較のため,近赤外光源を製作した. 発光素子として用いたものは二種類の赤外発光ダイオードであり, ひとつはピーク波長が870nmとやや短かく 肉眼でも赤い光が認識できるものである(東芝製のTNL227, 定格電圧1.8 V,定格電流100 mA). もうひとつのピーク波長は940 nmとやや長く 肉眼では発光を確認できないものである(メーカーは不明, 型番はOSIR-5113A,定格電圧1.25 V (1.2 〜 1.8 V), 定格電は20 mA (?)). これらの発光強度が強すぎると撮像素子が飽和して白色となる. 発光強度を調節するため,3 V 直流電源を, 1/4 W 炭素皮膜抵抗抵抗および電流計と直列接続した.
  4. 加熱対象となる岩石の準備
    本実験の目的には,試料は玄武岩〜安山岩質の岩石であれば何でも良い. 使用した試料は,地質調査総合センターの石捨て場から拾ったものである. 恐らく地磁気研究のために整形された,直径2cmの円柱状玄武岩である.

被写体の温度制御・測定法


 この実験は,温度が正確に測定された状態での, 被写体の黒体輻射光の撮影を必要とする. 温度調節装置のついた電気炉等を用いれば, 試料を所定の温度に正確に加熱することは可能である. しかしながら,撮影のためにはどうしても試料を加熱炉から出す必要があり, それにより電気炉から出した試料の温度は急激に低下し, 時間ととも温度低下速度は緩やかになる.

 そのような温度変化があるにもかかわらず, 加熱温度と露光中の温度とが等しいと無理に仮定すれば, 撮影された時点の実際の試料温度は, 仮定した温度よりも低いことになる. したがって,もしもその映像と噴火映像の比較により噴出物の温度を見積れば, 温度を過大評価することになる.

 大気中に放置された後の試料の温度変化を防ぐことは,非常に困難である. そこで本研究では撮影前の試料の正確な温度制御は諦めた. その代わり,刻々と変化する試料表面温度を記録することにより, 露光中の試料の温度の正確な把握を試みた. 熱赤外カメラ(TVS620)を用いると, 被写体表面の温度を1秒間に30回測定できる (対象物の温度が100℃以上の場合,精度は±2%). TVS620には時計が内蔵されているので, 時計表示(最小分解能は1秒)とともに 被写体の熱赤外画像をビデオ撮影(NTSC出力)することにより, ある時刻における撮影中の被写体の温度を把握できる. 実験に用いた全ての映像機器の内蔵時計を,TVS620に合わせておくことにより, 撮影時刻にもとづいて,被写体の温度をすべて把握することが可能になる.

被写体の加熱法


 この実験に用いた縦型円筒炉は上下が開いている. 試料は円筒と軸対称となる位置に, 円筒炉とともに断熱板の上に載せた状態で, ガスバーナーによる加熱を受ける. 商品仕様書によれば, ブタン/プロパン混合ガスを用いるこのガスバーナーの炎の温度は, 約1300℃である.

 加熱中の試料の表面温度は,随時熱赤外カメラでモニターされる. 試料表面が所定の温度(900℃)に達成後, 熱伝導によって試料内部がほぼ均温になるとみなせるまで, 数分間その状態を保った後に, 円筒部をピンセットで摘み去ることにより, 高温の試料を露出させた. 円筒部は僅か約37グラムと軽量で, しかもピンセットで摘み易い形状なので, 試料を安全かつ迅速に露出させることが可能である.

撮影方法・撮影時刻の把握法


 環境光の影響を除去するため, 岩石の加熱および撮影は夜間に行なった. 外灯の光が入らないよう窓のブラインドを閉ざし, 廊下の非常灯の光が入らないようアルミホイルを用いて遮光し, 室内に置かれた諸処の表示灯にも同様の処置を行なったが, データの採取に用いた電子機器の液晶パネルや表示灯の遮光は 十分でなかったため,若干の環境光が残された. 加熱実験は合計11回行なったが, このうち最初は環境光の除去に問題が大きく, また5回目は操作ミスにより温度測定ができていない.

 高温の試料を炉から露出した直後から, 試料をとり囲む複数の撮像機器によって, 同時に(但し非同期・断続的に)撮影操作が行なわれた. 露光時間は,キヤノン製EOS 5D Mark II においては,10秒・15秒. Power Shot SX 10 IS においては4秒・8秒・20秒. EOS Kiss Digital N においては1秒・2秒・10秒・15秒・30秒. ニコン製D40は1秒.D90は15秒・20秒・30秒. ミントロン製超高感度テレビカメラMTV-63V6HNはシャッター速度が不明であるが, 1秒間隔で画像を転送したことから, 露光時間はそれよりも短かいことは確実である. ソニー製ハイビジョンビデオカメラHDR-XR520もシャッター速度が不明であるが, 動画のフレームレートが15〜30 fpsであることから, 恐らく露光時間は0.1秒程度ではないかと思われる. なおHDR-XR520において「ナイトモード」による撮影をする際には, 赤外投光器をアルミホイルで覆うことにより,試料以外の光を除去した. 撮像素子の信号処理の際に基準となるカラーバランスは, 日中(デイライト)あるいはオートに設定し, 画像ファイルは圧縮率の低いJPEG形式で出力させた.

 本実験のように,露光時間が数十秒にわたり, かつ刻々と変化する被写体を撮影する際には, 露光開始時刻と露光終了時間を区別する必要がある. 画像の撮影時刻,露光時間,レンズの焦点距離,等の情報は, 撮影されたJPEGファイルの情報により,日本電子工業振興協会による 「ディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格(Exif)」 にもとづいて抽出された. このうち,撮影時刻(露光開始時刻)と,露光時間(秒)の情報とから, 露光開始時と終了時の被写体の温度を別々に読みとった. なお,カメラによって, Exifのタグが記録した時刻の意味が異なるので注意が必要であった. 具体的には,今回使用した撮影機器のうちPower Shot SX 10 ISは 露光終了時の時刻が記録されるのに対し, それ以外のものは露光開始時刻が記録されていた. そのため,機種によって撮影時刻を補正した. Sony製ビデオカメラHDR-XR520については, ファイル生成時刻を基準に,手動で時刻を読み取った.

結果


岩石の温度



上のサムネイルをクリックすると, 熱赤外カメラTVS-620による画像(ムービー)が上映される.

 熱赤外カメラTVS-620による画像 の右下には,撮影時刻が表示されている. 画面左下の数字のうちHTは画面中の最高温度を示している. このような動画の情報にもとづき, 1秒刻みで,時刻と試料温度の関係を把握できた. 試料の温度を,加熱終了(撮影開始)からの秒数に対してプロットしたものが, 下の6つのグラフである.加熱実験は延べ11回行なったが, いずれの加熱実験においても再現性良く, 試料の温度は加熱終了後は急激に低下し, 時間とともに低下率がゆるやかになることがわかる.

run01_T-t.png run02_T-t.png run03_T-t.png
左:加熱番号01
中:加熱番号02
右:加熱番号03

run04_T-t.png run06_T-t.png run07-11_T-t.png
左:加熱番号04
中:加熱番号06
右:加熱番号07〜11

時刻と試料温度の関係を下の例に記したテーブルにすることにより, デジタルカメラの撮影時刻にもとづいて, 試料温度を詳細に把握することが可能になった.

時系列と温度の関係(3644行のうちの一部)

時系列文字列温度(℃)
20090418212358900
20090418212359894
20090418212400887
20090418212401881
20090418212402874
20090418212403868
20090418212404861
20090418212405854
20090418212406848
20090418212407841
20090418212408835
20090418212409829
20090418212410823
20090418212411818
20090418212412814
20090418212413809
20090418212414804
20090418212415800
20090418212416795
20090418212417790
20090418212418785
20090418212419780
20090418212420775
20090418212421771
20090418212422767
…略……略…

岩石温度と画像の対応


肉眼による観察


 肉眼では,高温の岩石は700〜800℃においてやや黄色味をおびた赤色で, 600〜700℃では赤色で,500〜550℃以下では赤熱が確認できなくなる. 肉眼の光学的特性および観測者の感受性には個性があると思われるが, 少なくとも5人の観測者(赤司卓也・伊藤隆夫・坂井健・前嶋美紀・宮城磯治) の間では,温度と見え方に関する意見は一致している.

ミントロン製超高感度テレビカメラMTV-63V6HNによる画像


 加熱番号1〜6で撮影された画像 (Mintron_Panasonic_Maejima) は,400℃〜500℃あれば十分赤熱は映るが, 約360℃以下では赤熱が映らないことを示した(代表例は加熱番号6).

run06_900.jpg run06_800.jpg run06_700.jpg
左から,900℃,800℃,700℃

run06_600.jpg run06_500.jpg run06_450.jpg
左:600℃
中:500℃(肉眼で浅間明るい火映と同じ程度に見える岩石の赤熱は,このように映る)
右:450℃(肉眼で浅間の弱い火映と同じ程度に見える岩石の赤熱は,このように映る)

run06_400.jpg run06_374.jpg run06_350.jpg

左から,400℃,374℃(まだ僅かに見える),350℃(見えない)

NIKON製D40による画像


 加熱番号7〜11で撮影された画像 (NikonD40) は,Sensitivity=ISO 1600において高温の岩石は500〜800℃の 広い温度範囲において赤〜ピンク色を保ち, 500〜400℃では赤色で, 約370℃以下では赤熱が映らないことを示した.


左から:632-657 ℃,411-422℃,371-382℃
Sensitivity=ISO 1600, Lens=50.0mm Exposure: Time=1.0e+01sec, Apeture=F2.0,

NIKON製D90による画像


 加熱番号7〜11で撮影された画像 (sakai_D90_20090418) は,Sensitivity=ISO 1600において高温の岩石は およそ750℃以上では黄色味をおびた赤色で, 550〜750℃では赤色で, 約490℃以下では赤熱が映らないことを示した.


左から:787-900 ℃,564-615℃,476-513℃
Sensitivity=ISO 1600, Lens=95.0mm Exposure: Time=2.0e+01sec, Apeture=F13.0-32.0,

Canon EOS 5D Mark IIによる画像


 加熱番号1〜6で撮影された画像 (Canon_EOS5D_run01-06_Maejima) は,Sensitivity=ISO 1600, Lens=50.0mm Exposure: Time=15 sec, Apeture=F2.0, の条件において,高温の岩石は700〜800℃では黄色で, 500〜700℃では黄色味をおびた赤色で, 500℃〜450℃は赤色で, 約400℃以下では赤熱が映らないことを示した.


左から:760-868 ℃,465-494℃,419-454℃
Sensitivity=ISO 1600, Lens=50.0mm Exposure: Time=1.5e+01sec, Apeture=F2.0

 加熱番号7〜11で撮影された画像 (Canon_EOS5D_run07-11_Maejima) は,Sensitivity=ISO 6400の条件では Sensitivity=ISO 1600とほぼ同じ映り方であるが, Sensitivity=ISO 25600においては高温の岩石は700〜800℃では赤〜ピンク色で, 400〜700℃ではISO1600に比べて黄色味の少ない赤色で, 約370℃以下では赤熱が映らないことを示した.


左から:750-795 ℃,488-506℃,385-398℃
Sensitivity=ISO 25600, Lens=50.0mm Exposure: Time=1.5e+01sec, Apeture=F2.0

Canon製PowerShot SX10 ISによる画像


 加熱番号1〜6で撮影された画像 (Canon_PowerShot_SX10IS_akashi) は,Sensitivity=ISO 800, Lens=31.9mm Exposure: Time=4.0e+00sec, Apeture=F5.0, の条件において,高温の岩石は700〜900℃では黄色味を帯びた赤色で, 550〜700℃では赤色で, 約500℃以下では赤熱が映らないことを示した.


左から:887->900 ℃,516-522℃,496-503℃
Sensitivity=ISO 800, Lens=35.6mm Exposure: Time=4.0e+00sec, Apeture=F5.0,

Canon製EOS Kiss Digital Nによる画像


 加熱番号7〜11で撮影された画像 (miyagi_EOSKissDigitalN) は,Sensitivity=ISO 1600において高温の岩石は およそ750℃以上では黄色味をおびた赤色で, 550〜750℃では赤色で, 約490℃以下では赤熱が映らないことを示した.


左から:869-881 ℃,513-517℃,477-473℃
Sensitivity=ISO 1600, Lens=35.0mm Exposure: Time=2.0e+01sec, Apeture=F4.0,

Sony製ハイビジョンビデオカメラHDR-XR520による画像


 加熱番号2で撮影された「ナイトモード」画像 (Sony_HDR-XR520_Ito のうち青緑色の画像)は,650℃以上ではハレーションが生じるほど輝度が高いが, 約390℃以下では赤熱が映らないことを示した.


左から:884 ℃,432℃,388℃
「ナイトモード」での撮影.
Sensitivity, Lens, Exposure Time, Apetureは不明

 このSONY製のビデオカメラが塔載しているナイトモードという機能は, 夜間のビデオ撮影のために, 通常の撮影時よりも赤外領域の感度を上げる (赤外領域側に透過領域を少し広る)ものである. 従って,ナイトモードによる高温の岩石撮影でハレーションが生じたのは, 高温の岩石から放射される近赤外光に対する感度が高まったためと考えられる.

 「ナイトモード」以外の画像 (Sony_HDR-XR520_Ito) は,約900℃でもハレーションが生じることはなく, 約550℃以下では赤熱が映らないことを示した.


左から:894 ℃,613℃,529℃
Sensitivity, Lens, Exposure Time, Apetureは不明

近赤外光源


肉眼による観察

 「実験方法」の章で述べたように, ピーク波長が870nmとやや短かい発光ダイオードでは, 暗闇で通電肉眼でもわずかに赤い光が認識できる. 一方,ピーク波長が940 nmとやや長い発光ダイオードでは, 肉眼では発光を確認できない.

ミントロン製超高感度テレビカメラMTV-63V6HNによる画像

run06_900.jpg run06_800.jpg run06_900.jpg
左:ピーク波長940 nm, 中:ピーク波長870 nm 右:比較のための岩石(900℃)

870 nmのものはハレーションやゴーストが出るほど強く感光したが, 940 nmのものはそれほどではない. 但し,これら種類の異なる発光ダイオード

NIKON製D40による画像


左:ピーク波長940 nm, 中:ピーク波長870 nm 右:比較のための岩石(632-657 ℃)

NIKON製D90による画像


左:ピーク波長940 nm, 中:ピーク波長870 nm 右:比較のための岩石(787-900 ℃)

Canon EOS 5D Mark IIによる画像


左:ピーク波長940 nm, 中:ピーク波長870 nm 右:比較のための岩石(760-868 ℃)

Canon製PowerShot SX10 ISによる画像


左:ピーク波長940 nm, 中:ピーク波長870 nm 右:比較のための岩石(887->900 ℃)

Sony製ハイビジョンビデオカメラHDR-XR520による画像


左:通常モード.右:ナイトモード
左右ともピーク波長870 nm.

まとめ


 以上の実験により,次のことが示された.

  1. 電子撮像素子により得られた高温の岩石の画像は, 肉眼の認識とは異なる色調を呈する.
  2. 電子撮像素子は,肉眼では赤熱が認められない温度においても, 高温の岩石を映し出すことがある.
  3. 赤熱映像の映る温度の下限や画像の色調は,撮像機器ごとに異なる.

 電子撮像機器が,肉眼では赤熱が認められない温度においても 岩石の放射光を映した事実は, 電子撮像素子が近赤外光にも感度を有することで説明できる. 現在市販されているほとんどの電子撮影機器には, 撮像素子とレンズの間に赤外線遮断フィルターが挿入されている. しかしこれらのフィルターは赤外線を完全に遮断するわけではないので, これを透過した赤外線量と撮像素子の赤外線感度との兼ね合いにより, 映像機器ごとに撮影される映像の映り具合が異なるのだと考えられる.

 本実験により得られた結果は, 夜間に電子撮像機器により得られた噴火映像に映された赤熱岩塊の映り具合から 岩塊の温度を推定する際には,撮像機器の種類や撮影条件を十分吟味する 必要があることを示している.

 最後に, 電子撮像機器が暗闇で高温の岩石が放射する光を撮影できなくなる下限の温度を, 撮影機材ごとにとりまとめる(下の表).

赤熱が認められなくなる温度の下限のまとめ
撮影機器 画像リスト 撮影可能温度の下限 撮影条件
Naked Eyes -- 500〜550℃程度 目をこらした
Mintron MTV-63V6HN index 約360℃ 超高感度モード
NIKON D40 index 約370℃ ISO 1600, F2.0, 50.0mm, 10 sec
NIKON D90 index 約490℃ ISO 1600, F13, 95.0mm, 20 sec
Canon EOS 5D Mark II index 約400℃ ISO 1600, F2.0, 50.0mm, 15 sec
Canon EOS 5D Mark II index 約370℃ ISO 25600, F2.0, 50.0mm, 15 sec
Canon PowerShot SX10 IS index 約500℃ ISO 800, F4.0, 35.6mm, 4 sec
Canon EOS Kiss Digital N index 約490℃ ISO 1600, F4.0, 35.0mm, 20 sec
Sony HDR-XR520 index 約390℃(ナイトモード),
約550℃(通常モード)
ナイトモード/通常モード

If you have questions about this page, contact Isoji MIYAGI