産業技術総合研究所   地質調査総合センター

三宅島空撮:2002年7月31日

                   by A.Tomiya (2002/09/05改訂)
現在,気象庁のアレンジにより,三宅島の上空に週に1回ヘリコプターを飛ばしており,
大学および産業技術総合研究所(旧・地質調査所)のスタッフがこれに搭乗して観測にあたっています.
原則的に,警視庁,東京消防庁,自衛隊,海上保安庁のヘリが交代で飛んでいます.

ここでは,7月31日に東宮により撮影された写真の一部を公開いたします.
小さな写真をクリックするともっと大きな写真(40-130KB程度)が御覧いただけます.
なお,写真の無断2次使用は御遠慮下さいませ.


観測時間  :2002年7月31日(水) 10:09~10:32および13:05~13:51(三宅島付近での滞空時間)
ヘリコプター:警視庁「おおとり1号」
搭乗者   :大久保(東大震研),大島(東大),東宮(産総研),尾台 ・松森(気象庁),ほかクルー3名
行程:
  9:05 東京ヘリポート離陸
 10:07 三宅中学校ヘリポート着陸(大久保さん降機→島内にて重力測定)
 10:09     同     離陸
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         火口観測(10:09~10:32)
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 10:48 新島空港着陸(給油・休憩・COSPEC機材セッティング)
 12:46    同   離陸
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         COSPEC観測(13:05~13:51)
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 13:56 三宅中学校ヘリポート着陸(大久保さん再搭乗)
 13:57     同     離陸
 14:51 東京ヘリポート着陸

○観測の様子

DSCN3849s.JPG(1) DSCN3826s.JPG(2)
三宅島全景(写真1=島の北東沖より).
中腹より上は雲に覆われていた.
「白色の噴煙」が雲の上に頭を出すように見えることもあったが(写真2=島の南東沖より),雲と噴煙との識別は概して困難であった.
DSCN3771s.JPG(3) DSCN3773s.JPG(4) DSCN3784s.JPG(5) DSCN3785s.JPG(6) DSCN3792s.JPG(7)
「青白いガス」は,三池方面(火口より東)に流れていた.
写真3,4は三宅島空港付近より北方向を,写真5,6は赤場暁付近より南方向を見たもの.
写真7は,高度3500ftより,火口のあるべき場所を見たもの. 完全に雲に覆われていて,火口・カルデラは全く見えなかった.

DSCN3801s.JPG(8) DSCN3839s.JPG(9)
COSPEC観測(気象庁スタッフにより実施).
写真8は機材の取り付け作業の様子(新島空港にて). 今回は,2台の機械を並べて,機械ごとの測定値のばらつきなどをチェックしていた.
写真9は実際の観測の様子.真上を向いた筒に,上方から来る紫外線(光源は太陽光およびその乱反射)が入る仕組み.噴煙の真下を通過する時,噴煙中のSO2によって紫外線の特定の波長が吸収され,その吸収の大きさからSO2の量を測定することができる,というのがCOSPECの原理である.
DSCN3761s.JPG(10) DSCN3779s.JPG(11) DSCN3854s.JPG(12) DSCN3766s.JPG(17)
山麓の様子.
写真10は,島の南西の富賀神社付近から山頂方向を見た様子.
写真11は,島の北の三宅支庁付近の様子.このあたりは緑が青々としている.
写真12は,島の東の三宅村役場(三池)の様子.今回のように,三池は火山ガスの直撃を受けることが多い.
写真17は大路池.池の色は,7/31の時点では透明感のあるエメラルドグリーンであったが,その後(少なくとも8/29以前)には茶色っぽく濁ってしまったとのことである.[写真17は2002/9/5に追加]
DSCN3756s.JPG(13) DSCN3757s.JPG(14) DSCN3764s.JPG(15)
島内では,いたるところで土木工事が行なわれている.
はじめは道路啓開(寸断された道路の復旧)工事が多かったようだが,最近は砂防(土石流対策)工事が目立つようになった印象を受けた.写真13,14は,阿古の鉄砲場付近の土石流対策工事の様子.ここは,1983年溶岩流(写真で真っ黒に見える部分)の上が泥流の通り道になってしまったため,その対策が為されている. 写真15は,島の南(大路池のやや西)の沢に架けられた仮設橋付近の様子.ここも泥流の通り道の1つ.
なお,山麓には,新しい泥流/土石流被害の跡は特に見当たらなかった.
DSCN3795s.JPG(16) DSCN3734s.JPG(18)
写真16は,本日お世話になった警視庁のヘリ「おおとり1号」(ベル412型).
写真18は,東京ヘリポートの待合所の掲示板に張ってあったポスター. 左のポスターの背景写真は三宅島雄山,真ん中のポスターの背景写真は有珠山2000年噴火であり, ヘリコプターが噴火の観測に果たす役割の大きさを示している. ちなみに,右のポスターの絵は本来噴火とは無関係であるが,偶然にも有珠山2000年噴火の噴煙に良く似たデザインになっていて,取り合わせの妙を演出している.[写真18は2002/9/5に追加]
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1.概況

天気は晴れ.風は弱かった.海上も波がとても静か.
三宅島は,中腹(海抜300m程度)より上は完全に雲に覆われており,
火口・カルデラは全く見えなかった.

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2.噴煙・ガス

「白色の噴煙」が雲の上に頭を出すように見えることもあったが,
雲と噴煙との識別は概して困難であった.
噴煙の高度は,火口上200-300m以下であろう.
白色の雲/噴煙は,島外まではたなびいていない.

「青白いガス」は,東(三池)方向に斜面に沿って流下していた.
火口観測(ドアクローズ)およびCOSPEC観測(ドアオープン)の際,
機内でもガス臭(SO2-H2臭および鉄さび臭)を感じた.
青白いガスは,島外を風下へ延々とたなびいていた.

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3.カルデラ内部・カルデラ縁

雲に覆われていたため,全く見えなかった.

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4.飛行コース等

○火口観測:
はじめ,雲の切れ間を探して低空(1000ft弱?)を飛行.
三宅中から反時計周りに三池まで飛び,そこで反転して今度は時計周りに赤場暁まで.
しかし,雲の切れ間は全くなかった.
次に,雲の上から火口が覗ける可能性に期待して,高空(3500ft)に上昇する.
しかし,雲は完全に火口を覆っていた.

○COSPEC観測:
島の東方沖(火口から5マイル)を,高度300ft,速度60ktにて,
南北に1往復半(北行→南行→北行).
このときの風は,230°の方向から5ktとのことであった.
5マイル地点でも機内でガス臭は感じられた.
その後,東側の海岸沿い(火口から3マイル)を1往復(南行→北行).
このときは,山からの吹き下ろしを受けたため,やや揺れた.
また,火口に近い分,機内でのガス臭も強かった.

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5.その他

島内作業を行なった大久保さんによると,島民の一時帰島が実施中だったらしい.
また,7/31は「火山ガス採取用パイプ」再敷設作業の予定日でもあったが,
悪天候(山上の視界不良)のため,延期になっている.
http://www.metro.tokyo.jp/SAIGAI/HISAI/miyake467.htm(東京都のページ)[リンク先修正: 2004/2/24]

以上
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Created:Jul.,31,2002