産業技術総合研究所   地質調査総合センター

三宅島空撮:2001年9月19日

                   by A.Tomiya (2003/10/7改訂)
観測時間  :2001年9月19日(水) 10:16~11:15(三宅島上空での滞空時間)
ヘリコプター:陸上自衛隊「UH-60JA」(東方ヘリ1飛)
搭乗研究者 :大島(東大)・東宮(産総研)=火口観測班
       尾台・飯野(気象庁)=COSPEC班
行程:
  8:55 陸上自衛隊立川駐屯地離陸
  9:53 神津島空港着陸(COSPEC機材積込)
 10:05   同  離陸
 10:16 三宅島上空到着(観測開始)
 11:15 三宅島上空出発(観測終了)
 12:00 陸上自衛隊立川駐屯地着陸

 #三宅島ヘリ観測について

写真をクリックするともっと大きな写真(40-140KB程度)が御覧いただけます.

なお,解説文中,「点p,q」や「点e」などの場所については,下記の地図を参照下さい:
三宅島のカルデラリム・インデックス・マップ


○三宅島/雄山全景

DSCN1500s.JPG 神津島付近から見た三宅島.噴煙がはじめ直上に上がり,それから北東方向にたなびくのが分かる.
三宅島のカルデラリムの海抜が800mとして単純に比例計算をすると噴煙高度は海抜約2000mとなる.

DSCN1514s.JPG三宅島全景.南西沖より.
DSCN1516s.JPG雄山全景.阿古上空より.
DSCN1597s.JPG三宅島を北側遠方から見た様子.ちょうどパルス的に白煙が高く上がった時であり,噴煙高度は海抜2500m程度に達しているように見える.

○陥没火口(カルデラ)内部の様子

DSCN1534s.JPG主火口付近の様子.
DSCN1535s.JPG主火口クローズアップ.
DSCN1545s.JPG主火口クローズアップ,その2.


DSCN1540s.JPG

比較的最近起こったように見えるカルデラ壁の崩壊跡.崩壊堆積物は9月7日当時非常に新鮮に見えたが,実際の崩壊は2001年3月上旬であったらしい(少なくとも3月28日に川辺氏が撮影した写真にはこの崩壊堆積物が写っていた).崩壊堆積物は雨の直後などにはとても新鮮に見えることがあるので,注意が必要である.


DSCN1577s.JPGカルデラ底の様子."黒い池"(手前の赤黒い大きい池)は健在.他に大小多数の水たまりが見える.最近降雨が多かったためであろう.


DSCN1524s.JPGカルデラ全景.南南西より.カルデラ内壁の東面~北面が見えている.
DSCN1543s.JPGカルデラの北東壁~東壁の様子.
DSCN1544s.JPGカルデラの南東壁の様子.


DSCN1528s.JPGカルデラリム.点u'(雁行割れ目)付近.
DSCN1572s.JPGカルデラリムの南側に超低空で接近中の様子.主火口のすぐ裏の点p,q付近.
DSCN1588s.JPGカルデラリムの西~南西部(i点~l点付近)の様子.

○山麓・山腹の様子

DSCN1563s.JPG1983年溶岩流の上を通過した泥流によって削られた跡.
DSCN1568s.JPG坪田の集落.9/19には坪田地区住民の一時帰島が実施されていた.

○COSPEC観測

DSCN1510s.JPGCOSPECの観測機材.
産総研・地調の機材を用いて,気象庁のスタッフが定期的に観測を実施中.
DSCN1553s.JPGCOSPEC観測(SO2ガス放出量観測)のため,噴煙の下を海上(神着沖5マイル)にて通過したときの様子.

○その他

DSCN1584s.JPG

気象庁・三宅島測候所の「A点地震観測室」(スオウ穴からやや下ったところ)の状況.ここしばらくデータが取れなくなっていたが,泥流によって施設が破損したためのようである.屋根の上の太陽電池パネルの一部が破損しているほか,小屋の下部数十cmが泥で埋まっていた.


DSCN1521s.JPG三池港.停泊中の船はおそらく「はまゆう丸」.
DSCN1604s.JPG本日お世話になった陸上自衛隊のヘリ.



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1.概況

天気は晴れ.
陥没火口(カルデラ)内部をはじめ,全般に非常に良く見えた.
噴煙はやや高く上がっていた.

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2.噴煙

白色の噴煙が主火口および周辺の噴気孔から出続けていた.
噴煙高度は最近にしてはやや高めの海抜2000m程度(カルデラリムから1200m程度).
パルス的に海抜2500mを超えていたときもあったようだ.
噴煙は主火口からはじめほぼ直上に上昇し,
海抜1500m付近からは北東方向へたなびいていた.
たなびいたあとも白煙は消えずに延々と残って流れていた.

青白いガスは,山肌を流下せず,白色噴煙と共に上空へ上がっているように見えた.
ガスの量はそれほど多く感じられなかった.

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3.カルデラ内部・カルデラ縁

陥没火口(カルデラ)内部は非常に良く見えた.
地形などに大きな変化は無いようだ.

主火口のうちカルデラ壁に近い方の穴から主として白煙が出ていた.
良く見ると火口内部が赤っぽく見えるのだが,
赤熱というよりは酸化の赤みであるらしい.
主火口のうちカルデラ底に近い方(低い方)の穴からは噴煙はほとんど出ておらず,
内部に硫黄が多量に析出している様子が良く見えた.

最近降雨が多かったためか,カルデラ内部には小さな水たまりが多数見られた.

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4.山麓の様子

今回はあまり山麓の観察は行なわなかった.
住民の一時帰島実施中(9/19は坪田地区)ということもあり,
島内には走行車両が多く見られた.

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5.その他~飛行コース等について

COSPEC隊と同乗しての観測であり,
神津島でCOSPEC機材を搭載した後に三宅島に向かった.
COSPEC機材セッティング時はドアオープンにて飛行した.

まずは高度6000-6500ftで上空から三宅島を俯瞰し,
それから高度を落としてカルデラリムの西側サイドからカルデラ内を観察した.
特に,北西リム直上(点e付近)においてはホバリングを行ない,
主火口を正面から十分に観察することが出来た.

それから一旦北の海上に出て,噴煙の下をトラバースしてCOSPEC観測を実施.
しかし,データがうまく取れなかったとのこと.

そこで,再度火口観測を行なうことにし,カルデラの南側から超低空でリムに接近した.
主火口に近付いた際にわずかに硫黄臭がした.
そして,やはり西側サイドからカルデラ内を観察.

このあと,気象庁の「A点地震観測室」(スオウ穴からやや下ったところ)の状況を
上空から確認に行く(近々A点を復旧させる計画があるため.)
観測小屋の損傷はそれほどひどくはなかったが,
屋根の上の太陽電池パネルの一部が破損していたほか,
小屋の下部数十cmが泥で埋まっていた.
また,アクセスのための道路はズタズタになっていて車両通行不能な状況であった.

最後にもう1度火口観測を行ない,それから立川基地へ帰投した.

南海上の台風17号の影響が心配されたが,
終始穏やかな好天に恵まれ,快適なフライトであった.

以上
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Created:Sep.,19,2001