産業技術総合研究所   地質調査総合センター

三宅島空撮:2001年8月17日

                   by A.Tomiya (2001/08/20改訂)
現在,気象庁のアレンジにより,毎週月・水・金の3回,三宅島の上空にヘリコプターを飛ばしており,
大学および産業技術総合研究所(旧・地質調査所)のスタッフがこれに搭乗して観測にあたっています.
原則的に,月・水は警視庁,金は東京消防庁のヘリが飛んでいます.

ここでは,8月17日に東宮により撮影された写真の一部を公開いたします.
写真をクリックするともっと大きな写真(50-140KB程度)が御覧いただけます.
なお,写真の無断2次使用は御遠慮下さいませ.

(※) 2001年9月現在,ヘリ観測頻度は週に1回となっています.(2001/9/25補足)


<データ>
観測時間  :2001年8月17日(金) 9:44~10:15(三宅島上空での滞空時間)
ヘリコプター:東京消防庁「つばめ」
搭乗研究者 :下司(東大)・東宮(産総研)
行程:
  9:02 東京ヘリポート離陸
  9:44 三宅島上空到着(観測開始)
 10:15 三宅島上空出発(観測終了)
 11:04 東京ヘリポート着陸

○概況

(1) 北側(神着・美茂井付近)上空から見た三宅島雄山.今回は噴煙は珍しく南西(阿古方面;写真右上方向)へ流れていた.
(2) 東側(三池付近)上空より.
(3) 南東側(坪田付近)上空より.
DSCN1181s.JPG(1) DSCN1182s.JPG(2) DSCN1183s.JPG(3)

(4)~(5) 青白いガスは南西(写真右手方向)へ延々と流れて行った.伊ヶ谷上空より,阿古方面を見た様子.
DSCN1186s.JPG(4) DSCN1187s.JPG(5)

(6)~(7) 南東側(新澪池付近(6)~大路池南東付近(7))から見た雄山山頂~村営牧場付近.青白いガスが流下している.
(8) 北東側(アノウ岬~砲台付近)から見た三宅島雄山.
DSCN1204s.JPG(6) DSCN1202s.JPG(7) DSCN1210s.JPG(8)

(9) 三宅島空港(雄山の南東).山体斜面の植生について,雄山の南側(写真の左側)は緑のままだが,東側(上側)は茶色く見える.
DSCN1191s.JPG(9)

○鉢巻き道路沿い(標高300~350m付近の山腹)の様子

(10)~(11) 坪田上空より見た雄山の南~南東側斜面,鉢巻き道路沿いにある電波塔周辺.雄山の南斜面(10)は植生が緑だが,南東斜面(11)付近から茶色くなっている.
DSCN1192s.JPG(10) DSCN1193s.JPG(11)

(12)~(14) 雄山の東斜面.枯れたり倒れたりしている樹木が目立つ.
DSCN1194s.JPG(12) DSCN1196s.JPG(13) DSCN1197s.JPG(14)

○都道沿い(山麓)の様子

(15) 大路池と新澪池の間の泥流被害地点に掛けられた新しい橋.
(16) 大路池南東の泥流被害地点に掛けられた新しい橋.
DSCN1203s.JPG(15) DSCN1206s.JPG(16)

(17) 大路池
DSCN1207s.JPG(17)

(18) 赤場暁・ひょうたん山.1940年噴火で形成されたスコリア丘.
DSCN1208s.JPG(18)

(19) 赤場暁付近の泥流の通り道.ここにも新しい泥流の形跡はなかった.
DSCN1189s.JPG(19)

○その他

(20) 伊豆大島(手前の島)と富士山.
(21) 海ほたる/東京湾アクアライン.
(22) 上空から見た東京へリポート全景.
(23) 今回の観測でお世話になった東京消防庁ヘリ「つばめ」.
DSCN1214s.JPG(20) DSCN1170s.JPG(21) DSCN1221s.JPG(22) DSCN1222s.JPG(23)


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1.概況

上空の天候は晴れだが,三宅島雄山の上半分には雲が張り付いていて,カルデラ内
部の観察は全くできなかった.
今回は噴煙が珍しく南西(阿古・富賀神社方面)へ流れていた.これは,南海上に
ある台風11号の影響で北東風が吹いていたため.
このため,山体東斜面をじっくり見ることができたが,そこでは樹木の枯死が目
立っていた.

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2.噴煙

純白な噴煙が雲を突き抜けてもくもく上昇していた.噴煙最上部の高度は海抜1500m
程度.白色噴煙は横にたなびかずにそのまま消滅していた.

青白く濃密なガスは南西(阿古・富賀神社方面)に流れ,そのまま海上を延々とど
こまでもたなびく.海岸まで流れ下らずに一定の高度でほぼ水平方向に流れている
ように見えた.これは斜面の地形(斜度)の問題(※)かもしれない.

(※)山体の東斜面はカルデラリムから海岸まで斜面がほぼ一直線なので火山ガスが
  斜面に沿って海岸付近まで下りやすいのに対し,
  南西斜面はカルデラリムから下ったあと一旦村営牧場付近で地形がなだらかに
  なってその後に再び斜度が増すため,ジャンプ台のような効果があったのかも
  しれない??

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3.カルデラ内部・カルデラ縁

標高500-600m程度から上は雲に覆われていたため,
カルデラ内部・カルデラ縁の観察は全くできなかった.

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4.山体斜面

山体の東側の山腹斜面をじっくり見ることができた.
他の方向に比べて枯れている木が多いのが目についた.倒木も多かった.
枯木や倒木は尾根地形でも広く見られたことから,泥流のためというよりは
火山ガスの被害のためである可能性がある.
(火山ガスの流下は東方向に卓越していたため.)

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5.都道沿い(山麓)

都道沿いに伊ヶ谷(北西)-三池(東)-新澪池(南南西)を低空で飛んだが,
新しい泥流が発生した形跡は見られなかった.また,新たな降灰も見られなかっ
た.

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6.その他~飛行コース等について

高度5500ftで神着・美茂井付近から三宅島上空に入り,まずは高空(4500~
6500ft)から三宅島全体の観察を行ないつつ右回りに一周(北→東→南→西→北)
した.この際に,高度を一時6500ftまで上げて噴煙(青白いガス)の上を飛び越え
ている.その後,高度を4500ftから2000ft程度まで下げつつ右回りに半周(北→東
→南)した.
このあと,坪田付近で右旋回し,今度は低空(対地高度1000ft以下)でなめるよう
に山腹(ほぼ鉢巻き道路沿い)を左回りに半周(南→東→北西)した.雲の下から
カルデラ内部を観察しようとチャンスを窺っていたが,結局断念.
伊ヶ谷付近で再度右旋回し,やはり低空で今度は都道一周道路沿いに右回りに
3/4周(北西→東→南南西)した.
最後に,新澪池付近で左旋回し,左回りに半周(南南西→東→北)しつつ,そのま
ま東京へリポートへと帰投した.
なお,観察中,火山ガスの臭いは全く感じなかった.

以上
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Created:Aug.,17,2001