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写真 パネルディスカッションの様子. |
表題フォーラムのうち,筆者が参加した一般向けの講演会,シンポジウムについて報告します.
9月7日午前の竹村公太郎氏(財団法人リバーフロント整備センター理事長)の「広重に見る日本近代文明の萌芽」と題する講演では,日本の文明の成り立ちを地形学・地質学などの視点から見ると面白く,それを通じて国土の合理的な利用に地質調査業が役立つことをアピールできるという話でした.東京低地の地盤を直感的に理解するために,広重の描いた鶴の住む江戸三河島の絵を見せて,近世まで付近に湿地が広がっていた,という例が紹介されました.
同日午後には,「自然とどう関わるか―地質調査業の役割―」と題するシンポジウムが行われました.北海道環境財団理事長の辻井達一氏をコーディネータとし,岡田弘氏(北大名誉教授),石森秀三氏(北大環境学高等研究センター長・教授)他計4名によるパネルディスカッションが行われました.
岡田氏は,地球の恵みと地球がもたらす災いを,野外で実感して理解するのが重要であることを紹介されました.岡田氏は有珠・洞爺湖地域を世界ジオパークネットワーク加盟のジオパークにしようと努力されています.
石森氏は,20世紀の日本の観光は団体で名所を周遊する他律型の観光であったが,個人・家族・小グループによる自律的な参加・滞在型観光が伸びて来ており,その対象として北海道の自然資源は魅力的で,北海道で新しい観光のあり方が創造できるのでは,と提言されました.
討論では,参加・滞在型観光としてジオツーリズム・エコツーリズムなどが有望であること,景観を保全するには観光を通じた地域振興も重要であることなどが議論されました.地質調査業に携わる人が,語り部として滞在・参加型の観光に関わることへの期待も表明されました.
9月7日午後には,和泉晶裕氏(北海道開発局)による「日本風景街道の源流―シーニックバイウェイ北海道の取り組み―」と,北川健司氏(遠軽町長)他による「白滝黒曜石遺跡ジオパーク構想について」という二つの講演が行われました.
「シーニックバイウェイ北海道」は,美しい景観作りと地域の歴史・文化・特産物の活用により,ドライブの途中に寄り道(byway)してもらって地域振興をしようという活動です.行政と各種団体の共同により,地元の人の様々な活動が盛り上がっています.地元の資源と地域の人の取り組みで地域振興を目指す点で,この活動はジオパークと基本的なスタンスが同じです.シーニックバイウェイの成功は,ジオパークの今後の活動に参考になるところが多いと感じました.
北川氏はジオパークを通じた町作りについて訴えました.白滝黒曜石遺跡を長年調査している木村教授は遺跡の重要性を紹介し,この素晴らしさを多くの人に伝えるにはどうすればよいか,「観光考古学」という立場で研究したいと宣言されました.
今回参加して,地球科学は一般の人々に興味を持ってもらえる題材であり,今後生涯学習の場や観光の対象としてもっと活用されていくべきである,と感じました.
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