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デフレ経済,地学教育軽視,理系離れ,少子化等の中で,資源系学会の経営はいずこも苦しいらしいが,日本地熱学会の場合,これに政府の地熱インセンティブ政策の後退が加わり,このところ,とくに苦しい学会経営を迫られている。日本地熱学会の毎年の学術講演会は,東京近辺での開催と地方での開催を繰り返しているが,東京近辺の開催の年に当たる平成16年度学術講演会は,このような苦しい台所事情の中で,12月1日〜12月3日の間,会場経費負担の少ない産総研つくばセンター共用講堂で開催された。しかし,参加者の顔には,心なしかこれまでの重苦しさとは異なり,京都議定書の2005年2月発効への期待感など明るい兆しがみられ,学術講演会は予想外に意欲的な内容に終始した。 とくに,「地中熱利用」と「地熱商品性その2」という2つのオーガナイズドセッションには多くの人が参加し,インセンティブの少ない中でも,何とか自助努力で地熱利用を普及して行こうという意気込みが感じられた(写真1).地中熱については,一般セッションの中でも,3つのセッションが行われ,最近の中心的課題となっている.HDR(高温岩体)についても,4つのセッションがあり,国内研究者がオーストラリアクーパー盆地のHDRプロジェクトにおける様々の貢献を報告するなど,研究者の根強い関心を伺わせた.このほか,火山のセッションでは,雲仙科学掘削に関する4つの講演が関心を集めた.とくに,掘削井が捕捉した火道付近の,予想外の低温の理由に議論が集中した. 圧巻は,日本地熱学会会長,野田徹郎産総研首席評価役の行った特別講演であった.日本地熱学会はいまだに年会費5000円という緊縮経営を維持しているが,その割に論文数等,高いパフォーマンスを堅持していることが統計データにより示された.つまり,自信を持ってよいというアッピールである.また,日本地熱学会の今後の活路として,温泉分野との垣根を取り払い,地熱開発技術で培われた精緻な技術を,温泉発電等を含めて,温泉分野に活かして行く可能性と期待感が示された. 今回の日本地熱学会の印象を一言で表せば,地熱の低落傾向が,自助努力を含めた意味で『底を打った』ということであろう.そして,地熱関係者の間には,京都議定書の目標達成に,地熱を利用しない手はないという自負心さえ,感じられた.また,財政基盤強化のために企画された,会員有志による寄付金キャンペーンが,学会会期中に30万円の大台を突破した.この事実も,学会員の地熱に賭ける並々ならぬ熱意を発露しているといえよう. |
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