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日本情報地質学会シンポジウム2006「Web-GISによる公開情報活用とその促進環境」
宝田 晋治(地質調査情報センター)
写真1:シンポジウムの状況.
写真2:展示中のG-INDEX と GeoMapDB.
2006年12月15日に,秋葉原ダイビル5階において,日情報地質学会シンポジウム2006「Web-GISによる公開情報活用とその促進環境」が開催されました(写真1).主催は日情報地質学会で,産総研,全国地質調査業協会連合会(全地連),NPO地質情報整備・活用機構(GUPI),自治体−産総研地質地盤情報連絡会が共催,日本地質学会情報地質部会が後援になっています.9時半の開会から18時半の閉会まで,最新のWeb-GISに関する各機関の取り組みが紹介され,とても充実した内容でした.参加者は約140名と大変盛況でした.産総研からは,古宇田,宝田,川畑,児玉の4名が講演を行いました.
副会長の井上氏による挨拶があり,その後,古宇田から趣旨説明がありました.基調講演として,経済産業省商務情報政策局情報処理振興課の坂本氏が,「経済産業省におけるGIS施策の取り組み」として,空間情報技術が今後ナノテクやバイオテクノロジーと並んで,3大重要科学技術科学技術であり,先進社会基盤のプラットフォームとして欠かせないものであること,コンテンツ充実が重要であることなどが示されました.次に,もう一つの基調講演として,東大空間情報科学研究センター長の柴崎氏は「空間情報社会の展望 地理空間情報活用推進基本法の背景と概要」の紹介を行いました.地理空間情報活用推進基本法は,現在審議中の法案であり,衛星測位と電子地図による新たな空間データ基盤構築を目指すための法案です.今後GIS化を促進するに当たって,その根拠となる法律となる予定です.ID code による識別,より精密な測位システムの重要性,整備体制などが紹介されました.国立環境研究所の大塚氏は,環境情報センターで取り組んでいる環境に関する各種データベースの紹介を行いました.環境国勢データベース地理情報システム(環境GIS),環境数値データベース(大気環境データ,水質環境データ),水環境総合情報サイト,大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君),花粉観測システム(はなこさん)の紹介がありました.土木研究所の傳田氏からは,「河川環境保全におけるGISの活用」として,野生の動物自動追跡システム開発とGIS活用,千曲川での魚の行動パターンの調査結果報告があいました.
農業環境技術研究所の上田氏からは,「Web-GISを用いた農業環境資源情報システム」として,農業環境インベントリー(土壌,昆虫,微生物,肥料、煙害)をWeb-GISシステムで公開準備中であることが紹介されました.農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所の小川氏からは,「水土里(みどり)情報システムと土地資源WebGIS」として,1/2,500精度の農業基盤情報整備,空中写真(オルソ画像)の整備などをWebGISで進めていることの紹介がありました.産総研グリッド研究センターの児玉氏は,「GEO Grid:衛星データとGISデータの統合に向けて」として,産総研グリッド研究センターと地質調査総合センターが中心となってすすめているGEO Grid プロジェクトの紹介を行いました.ASTERデータのアーカイブ化,DEMを使った火砕流シミュレーション,土地利用変化モニタリング,地質データとの統合などをWebGIS技術を活用しながら進めていることを紹介しました.石油天然ガス・金属鉱物資源機構の大岡氏は,「資源探査におけるGISとリモートセンシングの利用について」として,金属鉱物資源探査において,各種人工衛星 ・センサーを利用して,GISにより,有望地域を抽出する方法を紹介しました.
昼休みには,GUPIの根本氏によるWeb-Titanの実演,パスコによるArc/GISの紹介,大阪市大のReghavan氏によるOSGeo財団(フリーオープンソフトウェアの促進),伊藤忠テクノソリューションズ山根氏による3次元土木地質GIS用のGEORAMAの紹介などがありました.産総研からは,地質情報インデックス検索システム(G-INDEX)と統合地質図データベース(GeoMapDB)の展示を行いました(写真2).また,地質調査総合センターで取り扱っている各種のCD-ROMの販売を行いました.
午後からは,国土交通省国土計画局国土情報整備室の西澤氏が,「GISの普及と国土情報の整備について」の基調講演を行いました.国土交通省が取り組んでいる各種WebGISサービスとして,国土数値情報ダウンロードサービス,街区レベル位置参照情報サービス,国土情報ウェブマッピングシステム,航空写真画像情報所在検索・案内システム,オルソ化空中写真ダウンロードシステム,GISポータルサイトなどを紹介しました.私は,2006年3月より公開された地質情報WebGIS公開システム「統合地質図データベース(GeoMapDB)」の紹介を行いました.産総研地質情報研究部門の川畑氏は,2006年3月より公開を開始した地質情報インデックス検索システム(G-INDEX)と所内専用のArcGIS Serverの紹介を行いました.海上保安海洋情報部海洋情報課の戸澤氏は,日本海洋データセンター(JODC)が整備している海洋情報データベースとして,海底地形図やデジタル水深データなどの紹介を行いました.
東北大学工学研究科災害制御研究センターの源栄氏は,「地域の地震・地盤環境に調和した地震防災向上戦略」として,GISを用いた防災情報共有プラットフォームの構築を行い,地盤条件の違いによる地震対応をはかり地域防災力を高めることや,インセンティブ防災マップ作りの推進などの紹介を行いました.防災科学技術研究所の藤原氏は,今年7月より開始した科学技術信仰調整費による「統合地下構造データベース」の紹介を行いました.産総研,土木研究所などと連携して進めている地下構造データベースの分散管理システムを説明しました.北海道立地質研究所の小澤氏は,「Web-GISを活用した地質災害情報共有の試み」として,北海道の樽前火山と北海道駒ケ岳について開発したWebGISによる閲覧システムを紹介しました.防災科学技術研究所の井口氏は,2000年10月よりWebGISによる地すべり地形分布図データベースを公開しており,Shape地形式のデータダウンロード機能や2006年の1月からのWMS対応,Google Earth との連携機能などについて紹介しました.土木研究所の佐々木氏は,「土木地質におけるGISの活用」として,電子納品されたボーリング情報等のデータの利用,道路斜面防災GIS,土木地質環境GIS,土木地質材料GIS,土木地質調査及び土木地質物性DBについて紹介を行いました.ESRIジャパンの濱本氏は,「ジオグラフィネットワークとWebGISの将来像」について紹介を行いました.日本情報処理開発協会データベース振興センターの坂下氏は,「Web2.0時代の示空間情報流通−g-Life/g-Society に向けて−」として,今後,XDP,PIのJIS化,コンテンツ整備を行い,g-Life(いつでも,どこでも,時間情報,位置情報を意識せずに,それらを活用し,豊かな生活が送れる社会)を実現すること,ASEAN諸国へのGIS普及啓蒙,地質データベースの利活用推進を進めること等を紹介しました.
筑波大学の村山氏は,「GIS及びWeb-GISの活用について」として,デジタル地図の利用,GISの歴史と発展,空間データの規格化,Web-GISの歴史,貢献についての講演を行いました.今後,空間情報社会において,GISユーザ主導になってきており,誰でもどこでもいつでも自由にWeb-GISを使いこなすことができる時代になってきたことを紹介しました.そして,今後GIS力(適切な空間意思決定を可能にする能力)を身につける必要があり,WebGISの促進のためには,コンテンツの充実,提供者と利用者とのミスマッチ解消,インフラ整備,規格化,示空間解析機能の充実が必要であることが提言されました.最後に,パネル討論が行われました.パスコの北川氏は,ASP方式のWebGISにつて,GUPIの根本氏はFOSSを用いたWebGISについて,大阪市大の升本氏はWebGISによる,3次元地質モニタリングについて,大阪市大のRaghavan氏はフリーオープンソースのOSGeo財団について,川崎地質の中田氏はインターネット上のハザードマップの公開状況とWeb-Titanによるボーリングデータの閲覧方法について,紹介し,今後のWebGISが進むべき方向性などについて,討論を行いました.最後に日本情報地質学会会長の塩野氏が閉会の挨拶を行いました.
今回のシンポジウムは,WebGISに関する各機関の現状を知り,今後どのようにデータベースを構築して行くべきかを考える上で,貴重な機会となりました.ぜひ,各機関のホームページで公開されているWebGISを活用した各種のデータベースをご覧になっていただければ幸いです.
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