第5回地圏資源環境研究部門成果報告会の報告
棚橋 学 (地圏資源環境研究部門広報委員会)
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写真1:登坂博行先生による特別講演の様子.
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写真2:ポスターセッションの様子.
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地圏資源環境研究部門の第5回成果報告会が,2006年11月24日(金)の午後,産総研臨海副都心センターのバイオ・IT融合研究棟11階会議室で行われました.
当日のプログラムは以下のとおりです.
13:00-13:20 部門研究紹介(瀬戸研究部門長)
13:20-14:00 塩淡境界調査研究から沿岸域研究開発へ(丸井敦尚/地質バリア研究グループ)
14:00-14:40 物理探査電磁法による海岸平野における塩水性地下水分布の調査(光畑裕司/物理探査研究グループ)
14:40-15:20 ポスターセッション
15:20-16:10 招待講演 地圏水循環系モデリング技術の現状と課題(登坂博行/東京大学)
16:10-16:50 地下深部の熱水の進化に伴う元素挙動−鉱物資源探査手法の開発(村上浩康/鉱物資源研究グループ)
16:50-17:15 ポスターセッション
講演終了後 ,臨海副都心センター11階ロビーにおいて,懇親会が行われました.
今回は「地圏流体モデリング研究−環境 ・資源問題における流体の役割−」をテーマに掲げ,地圏資源環境研究部門の重点研究課題の一つである地圏流体モデリング研究の中の,廃棄物地層処分研究,地下水環境研究,鉱物資源研究とそれらに共通する基盤的課題である物理探査研究の最新の研究成果を紹介しました.また,ポスターセッションにおいて,10の研究グループのこの1年の概況と,個別の研究14件の計24件のポスター発表で,部門全体の研究の進捗状況を紹介しました.会場では部門の1年間の研究活動を示した「Green Report 2006」とトピックを分かりやすく示した「十大ニュース2006」,各講演のプレゼンテーション資料が配布されました.今回の成果報告会には114名の参加があり,懇親会も含め熱心な討論や情報交換が行われました.
講演では,瀬戸政宏研究部門長(*)が地圏資源環境研究部門の現状の概略を説明しました.地圏環境の利用,地圏環境の保全,資源の安定供給のための調査研究,技術開発とこれらの研究に関わる知的基盤情報の整備発信という部門のミッション,重点課題のロードマップ,各分野の主な研究成果,部門のマネジメントの状況を紹介しました.
その後,地圏流体モデリング研究の諸分野中核を担っている研究者3名による最新の研究成果の報告と,地圏流体研究分野の数値モデリング研究の第一人者である東京大学工学系研究科の登坂博行先生による講演が行われました.
登坂博行先生には,地表水と地下水の流動を連成させた大規模水循環モデリング研究をはじめとする最近の地圏流体モデリング技術の成果,課題を,解析手法の基礎から様々な応用事例まで多くのアニメーションを用いてわかりやすく紹介していただきました.登坂先生は11月に「地圏の水環境科学」(ISBN4-13-062812-7)と題するこの分野の包括的な教科書を東京大学出版から出版されたところです.
丸井敦尚主任研究員は,沿岸部地下水への海水の浸入による塩水と陸側の淡水の境界である塩淡境界形状の把握,変動の同定を中心とした地下水研究の成果を紹介しました.地下水の長期的な挙動の解明は,地層処分 ,CO2地中貯留など地圏環境の利用,保全に関わる様々な課題における非常に中心的な課題の一つです.東海村では陽子加速器建設工事に伴う大規模揚水と地下水中の塩淡境界の変動の動的な関係を初めて明らかにしたという画期的な成果が上がっています.
光畑祐司主任研究員は地下流体の探査に有効な電磁探査法について,いくつかの周波数を使うことで深部探査から浅部探査までの応用が可能であること,事例研究として沿岸部での塩淡境界の把握に有効であることを示しました.
村上浩康研究員は,地下深部の熱水の活動による浅熱水金鉱床や斑岩銅鉱床などの金属鉱床中の元素挙動の研究から得られた金属鉱床の探査指針を紹介しました.
(*)12月1日の人事異動で,瀬戸政宏は企画本部副本部長に移動し,矢野雄策が研究部門長に就任しました.
独立行政法人産業技術総合研究所
地質調査総合センター