地質情報展2006こうち−黒潮よせるふるさとの地質− 開催報告
地質情報展の新展開を目指して
地質情報展2006こうち実行委員長 佃 栄吉(地質調査総合センター代表)
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写真1:オープニングセレモニーでのテープカットの様子.左から佃,永野正展四国地質調査業協会理事長,中西穂高高知県副知事,相良祐輔高知大学学長,竹村 謙高知教育委員会高等学校課指導主事,木村 学日本地質学会会長.
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写真2:体験コーナー「自分だけの化石レプリカを作ろう!」の様子.
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地質調査総合センターは国として行うべき「地質の調査」に基づいて地質図や地震・火山などの研究成果を地質情報として整備し,それらを広く社会に普及することを目指しています.その普及活動の一環として,毎年各地で地質情報展を開催し,最もホットな研究成果や開催地に縁のある地質の紹介を行っています.
地質情報展は平成9年の第1回九州地質情報展「知っていますかあなたの大地−地質学が探る九州島−」を皮切りに,前身の工業技術院地質調査所時代に開始しました.今年度は,「地質情報展2006こうち」と題して,2006年9月15日から17日の3日間,高知市文化プラザ“かるぽーと”において開催しました.10年という節目を記念して,中西穂高?高知県副知事,相良祐輔?高知大学学長,竹村 謙?高知教育委員会高等学校課指導主事,永野正展?四国地質調査業協会理事長を来賓にお招きして,共同主催である日本地質学会の木村 学会長の出席を得て,初日にオープニングセレモニーを行ないました(写真1).
会場では,古くから研究が行なわれてきた,日本の地質研究の原点とも言える高知県を中心とした四国の地質に関して,研究者が自分自身の言葉で参加者に説明しました.また,体験コーナーでは,「自分だけの化石レプリカを作ろう!(写真2)」,「いろんな石を触ってみよう!」「砂を観察してみよう!」などのキャッチフレーズのもと,実際に化石,岩石,砂などに触れて,地質現象を体験していただくことができました.さらに移動地質標本館では,参加者からの地質・鉱物・化石・岩石に関する質問に対して,研究者が直接お答えしました.
地質調査総合センターの総力をあげて取り組んだ今回の地質情報展には,小・中学生,家族づれや学生,一般の方々にご参加いただき,好評のうちに終了いたしました.マスコミ取材によるテレビ,新聞での報道を見て参加される方もたくさんおられ,3日間で1,000名近い入場者を得ました.短い期間ではありましたが,「地質情報展2006こうち」を通じて,参加者のみなさまに地質が私たちの生活にどのように関わっているかを理解し,考えていただくきっかけになったと思います.
今後ともこのような広報活動を継続し,さらに多くの方々に地質調査総合センターの研究成果や社会に役立つ地質情報を普及させたいと考えております.来年は北海道札幌市での開催を予定していますが,これからの10年を見通して普及活動の意義をより明確にして,地質情報が担う社会貢献を明示していく所存です.そのために,開催地の研究所,博物館,大学,業界,行政機関などとの連携を強化し,地元の特徴を生かした地質情報展の開催を目指して,準備を開始いたしました.今後とも,みなさまのご理解とご協力をお願い申し上げます.
地質情報展2006こうちに参加して
名和 一成(地質情報研究部門)
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写真:「四国地域の地球物理図」コーナーの様子.
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地質情報展“しずおか”に事務局として参加して以来,3年ぶりに地質情報展に参加した.今回の“こうち”では展示コーナーの一つ「四国地域の地球物理図」コーナーを担当した.準備・説明は地球物理情報研究グループ員があたり,大熊・中塚・駒澤・名和が事前のパネル素材を作成し,佐藤(秀)と名和で当日の展示説明を行った(写真).
このコーナーでは,四国地域全体の重力異常図と磁気異常図を展示した.展示した図の解説がやや細かくなってしまったため,地質との対応関係を示せるよう同じ縮尺の地質図を重ね合わせたいと考えた.当日の説明の際には,トレーシングペーパーに印刷した後ラミネート加工した(これは事務局のアイデア!),半透明のシームレス地質図を利用した.ただ,来場者よりも関係者のウケの方が良かった気がする.
コーナーに立ち寄ってくれた人たちは,説明を真剣に聞いてくれた.“地磁気”と聞いて「オーロラの研究とは関係あるのですか?」とか,「“異常”って言っても何か悪いことを意味するわけではないのですよね?」という質問を受けた.このような,こちらが想定していなかった質問を受けるのは,直接話せるイベントの醍醐味であり,自分自身の勉強になる.
中には「“地質”にはあまり興味はないのですが」と地球物理図目当てに来てくれた建設業関係の人がいたのは,コーナー担当者としてはうれしかった.ただし,空間スケールや測定精度がその人には想定外だったようだが.
「世界が注目するホットな地域」とオープニングセレモニーで木村 学地質学会長が言っていた四国.しかしながら地質情報展で『ネイチャー』,『サイエンス』誌上を賑わわせている深部低周波微動・スロースリップイベントに触れた展示がなかったのは個人的には残念だった.他人のふんどしかもしれないが,最新の地球科学的成果として,地球物理図にこじつけてでも取り上げるべきだったように思う.
今後,地域によってはGSJ自前のデータで作成可能な比抵抗・弾性波構造図なども地球物理図コーナーで取り上げていい素材だと思っている.関係者の協力を期待したい.
体験コーナー
「遠くから飛んできた火山灰を洗ってみよう,顕微鏡で見てみよう」を振り返って
水野 清秀・植木 岳雪・山口 正秋(地質情報研究部門)
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写真:体験コーナー「遠くから飛んできた火山灰を洗ってみよう,顕微鏡で見てみよう」の様子.
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2006年9月15日〜17日に行われた地質情報展2006こうちにおいて,火山灰を用いた体験コーナーをはじめて開設いたしました.火山灰を構成する鉱物にはきれいな形や色のものがありますので,顕微鏡で覗いてもらったら,みなさんの関心を高めることができるのではないかと考えました(写真).鉱物粒子を取り出すふるいわけや洗浄作業も,体験してもらうことにしました.
最初は,風化した火山灰を触って手が汚れるのをきらう子供たちが多いかもしれないと心配しましたが,実際に始めてみると,多くの子供たちが自分でもやりたいと集まってきて,人だかりができるほどになりました.洗ったサンプルを乾燥させるホットプレートは小さいものしか用意しておらず,みんなのサンプルを乾燥させるのに時間がかかってしまったことは反省材料です.火山灰粒子はスライドガラスの上にじかにのせて見てもらっていましたが,傾けるとこぼれてしまうので,顕微鏡の周りが砂だらけになってしまいました.そのうち「砂のサンプルを作ろう!」のコーナーで両面テープを用いていることに気がつき,それを使ってみると,粒が空間に静止しているような形で見られることがわかりました.試行錯誤の連続で,企画する私たちにも大変勉強になりました.
参加した人たちの多くは,火山ガラスや石英やざくろ石などの粒子がきれいだと感想を述べてくれました.また個々の鉱物のことをもっと勉強したいという親子づれの人も見受けられました.火山灰を教育の材料にしたいと貰っていく先生もいました.来年にはさらに改良を加えて,このコーナーの面白さを伝えていきたいと思います.
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