GSJニュースレター NO.24 2006/9 |
地質地盤情報協議会第2回意見交換会の開催 佐藤 努(地質調査情報センター) 第1回意見交換会では主に海外の事例を扱いましたが,第2回意見交換会では主に国内におけるボーリングデータの整備や公開について,3名の方に講演していただきました.参加者は34名で,内訳は政府関係(内閣府,文部科学省,経済産業省)からの招待者が5名,講演者などその他の招待者が5名,当協議会からの参加者が20名,自治体関係者が4名(当協議会の2名を加えると計6名)でした. 講演は,まず杉並区の大谷康郎氏より,「区役所におけるボーリングデータの取り扱いについて」と題して,杉並区が管理する約6,000本のボーリングデータについて紹介がありました.これらのデータのほとんどは,建築基準法による建築確認のために区役所へ提出された資料のため,本来その他の目的には使用することができません.しかし,1995年の兵庫県南部地震を境にして住民の地盤情報に対する関心が高まったことと,区には地質地盤に関する情報が他に乏しいことから,問い合わせの際には職員が窓口でこれらの資料を見ながら対応しているそうです.最近では,マンションの安全性や地下水に関する問い合わせも増えており,このような地盤情報の公開とその方法が課題となっているそうです. 続いて,(独)防災科学技術研究所の藤原広行氏より,「統合化地下構造データベース(DB)の構築について」の講演がありました.本DBは,平成18年度科学技術振興調整費によって今年の7月からスタートしたプロジェクトです.藤原氏は,それまでの5年間に地震調査研究推進本部の地震動予測地図の作成に関与されており,その際に地震動予測における地盤情報の重要性,そして地盤情報を収集することの大変さを痛感され,このプロジェクトを立ち上げられたそうです.本DBは,浅いボーリングデータから深いものまで,そして日本全土に渡るデータを収集する予定とのことでした. 最後に,東京大学の榊原康貴氏より,「地理空間情報活用推進基本法案について」の講演がありました.この法案は,現在計画が進められている準天頂衛星を用いた高精度測位の実現に向けて,測位の基盤情報となる地理空間情報を公共財として位置づけるために作成されたものです.この法案が施行された場合,地理空間情報は国の責任下で品質が明示され,無償又は廉価で整備・提供される仕組みが構築されて,その窓口を地方公共団体が担当することになります.地質地盤情報も,同様の仕組みで整備・提供されることが望まれており,本法案から学ぶべき点は多いと考えられます.ちなみに本法案は既に国会に提出されており,早ければ9月の臨時国会で成立する見込みだそうです. 講演の後は,総合討論が行われました.まず注意すべき地質地盤情報の例として,鉱山や防空壕など陥没の危険性のある廃棄地下空間の問題が取り上げられ,危険性の公開やそれに関わる問題が議論されました.特に,このような危険情報の公開と賠償請求との関係について,情報公開によって賠償請求が起きることがある一方,公開しなかったことによって賠償請求が起きることも想定されます.これに個人情報保護が関わると,さらに問題が複雑になることも議論されました.後半では,建築確認によるボーリングデータについて議論が行われました.最近は民間の建築確認機関が増えており,そのため自治体等が管理しているデータの割合は低下し,データが分散しつつあります.地質地盤情報を統合的に管理するシステム作りを早急に構築する必要があることを共通の認識として,総合討論は終わりました. 第3回の意見交換会は9月11日に行われ,学会や自治体,情報ネットワークにおけるボーリングデータの整備や公開について議論を行いました.この様子については,次号において報告される予定です. なお地質地盤情報協議会の活動につきましては,GSJの産学官連携活動のWebページ(http://www.gsj.jp/Sgk/)をご参照下さい.
|
|||||||||
独立行政法人産業技術総合研究所
地質調査総合センター |
|||