地質標本館平成18年度夏のイベント
利光 誠一(地質情報研究部門)・谷田部 信郎(地質標本館)
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写真:この夏の地質標本館特別展のテーマ「砂」にちなんだ子どもたちに最も人気のコーナー「砂と遊ぼう!」の様子(8月19日).地質標本館多目的室に臨時の砂場を設置して行われた. |
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地質標本館では,小・中学校などの夏休みに合わせて体験学習会をイベントとして企画しています.2006年も7月22日の産総研一般公開(GSJニュースレターNo.23参照)以降,8月19日に「砂と遊ぼう!」,8月25日に「化石のクリーニング体験」,8月26日に「地球何でも相談」の3つのイベントを開催しました.ここでは,地質標本館の8月のイベント(体験学習会)について報告します.
体験学習「砂と遊ぼう!」
目代 邦康・清水 徹(地質標本館)・中澤 努(地質情報研究部門)情報)
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写真: 「山から川へ」の水路実験装置での実演の様子.川の源流から岩石の風化,土砂の侵食・運搬,下流部での堆積といった一連の砕屑物の粒子の動きが見えるように工夫されている. |
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8月19日(土)に地質標本館の夏休みイベントとして,体験学習「砂と遊ぼう!」が開催されました.このイベントは,7月22日から始まった地質標本館特別展「美しい砂の世界−不思議な砂・美しい砂・役に立つ砂−」の一環として行った体験学習会です.8月19日には,屋内イベントとして地質標本館多目的室で「砂変幻(すなへんげ)」,「伊豆諸島新島産の白砂の砂場で砂変幻の体験学習」,「手づくりの砂時計」,「エジプトの不思議:オベリスクとピラミッドの扉」,「世界の砂・日本の砂−有田コレクション−」を,地質標本館ホールで「鳴り砂を鳴らそう」,「ペットボトルを使った地盤の液状化実験−エキジョッカーとエッキー−」を行いました.さらに屋外イベントとして,山から海までの砂礫と水の動きを,水槽などを使って再現した「1.山から川へ:岩石の風化・侵食・運搬」,「2.川から海へ:三角州の形成実験」,「3.海岸:ウェーブリップルの形成実験」,「4.海:沈降管を使った土砂などの沈降実験」,「5.火山の山体崩壊による津波の再現」を行いました.このうち,ほとんどの実験は7月22日の産総研一般公開日に行った体験学習と同じですが,屋外イベントとして行った「1.山から川へ:岩石の風化・侵食・運搬」は今回,初企画となったものです.これは,青木正博地質標本館長が温めてきた企画で,川の上流部分で起こっている岩石の風化,侵食,そして砕屑物となった岩石の運搬,さらには川の中〜下流で砂粒などが堆積する様子を再現した実験です.川の最上流に砂で山を作ります.ここには水晶の鉱脈があるという設定で,水晶の結晶が混入されています.砂の中には石英・長石粒子のほか,砂鉄も混ぜておきます.この(砂)山に水をかけることで,流水によって土砂が川を流れ下るという設定です.流れた土砂は,実験装置の扇状地や,蛇行河川,三角州などに堆積していきます.水晶は上流の鉱脈から流れてきて下流側に堆積しますが,これにより,下流にある岩石が上流の地質を反映しているということを学ばせるとともに,流水中の礫の挙動を見ることもできます.また,砂鉄を混ぜることで,比重による砂粒の挙動の違いも学ぶことができます.この実験水路は,地質標本館の大和田朗,佐藤卓見の両氏が青木館長の意を汲みながら作製したものです.水路装置の外側にも花崗岩や石英鉱脈の写真を貼るなど,外見にもこだわった仕上がりとなっています.当日は暑い日差しの中でしたが,実験水路装置のまわりにはたくさんの子どもたちが群がり,企画・製作に携わった青木館長,大和田・佐藤両氏も汗を拭き拭き,子どもたちに説明を繰り返していました.
上述のように盛りだくさんの体験学習が一同に揃い,大勢の来館者でにぎわいましたが,今回は生活の中でも身近な存在である「砂」を素材にしただけに,子どもたちだけでなく,大人にも大人気でした.特に,多目的室に特設した新島産の白砂の“砂場”は,理屈なしで子どもたちの遊び場になったようです.近年,諸事情から公園の砂場で子どもたちが遊ぶことがあまりなくなったと聞きますが,残念なことだと思います.
この日のイベントには,地質標本館スタッフに加え,地質情報研究部門からもスタッフが参加しました.子どもたちへの直接指導の多くは,博物館の実務の研修に来ている博物館実習生12名があたりました.また,地質調査所OBの有田正史氏が特別参加し,「砂変幻」などの指導にあたり,話術の巧妙さと熱心な指導で子どもたちの心をとらえていました.
体験学習「化石のクリーニング体験」
辻野 匠・兼子 尚知(地質情報研究部門)
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写真:化石クリーニングの様子.博物館実習生の指導のもと,タガネとハンマーで岩石から化石を取り出します. |
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8月25日(金)に地質標本館の多目的展示室で,恒例となった夏休み体験学習「化石のクリーニング体験」が開催されました.栃木県那須塩原市の塩原層群(約30万年前の湖成層)から切り出した岩石(頁岩)をハンマーとタガネで割り,きれいな木の葉の化石を取り出して,その葉の名前を決める(鑑定)までの一連の作業を体験するこの体験学習は,子どもたちにとって人気のイベントです.
毎年,この体験学習では,博物館実習で博物館活動の実務訓練をしている大学生が子どもたちの指導にあたります.このため,前日には,博物館実習生も実際に岩石をハンマーとタガネで割り,化石を取り出す実務を受講しました.今回参加した博物館実習生も実際に化石のクリーニングをした経験はほとんどなく,翌日の指導を見据えて真剣な眼差しで練習に取り組んでいました.
イベント当日には,地質標本館のOBで,塩原層群の植物化石を長年研究されてきた尾上 亨さんと協力者の計4名の特別講師を迎え,博物館実習生の指導のもとに子どもたちが自分の手で取り出した化石について,鑑定の指導をしながら化石についての様々なことを解説していただきました.このイベントに73名の参加者が挑戦し,それぞれに木の葉の化石を取り出して,驚きと喜びの表情を浮かべていました.塩原の木の葉化石は30万年前のものですが,葉そのものは今も野山に生えている木々のものとほとんど変わらないため,参加者には親しみやすいものと思います.このイベントを通して,自分の住んでいる場所のまわりの自然にも親しみを増していただけるようであれば,イベントを企画した私たちとしてもうれしいところです.
地球何でも相談
坂野 靖行・中島 礼(地質情報研究部門)・奥山 康子(地圏資源環境研究部門)
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写真:地球何でも相談の様子.子どもたちのとってきた岩石や化石の鑑定をして夏休みの宿題のお手伝いになればと,スタッフの対応にも熱がこもります. |
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8月26日(土)には地質標本館ホールで「地球何でも相談」が開催されました.これは夏休みに採集した岩石・鉱物・化石などの標本の鑑定を指導することで,小中学生に夏休みの自由研究などのお手伝いをしてあげようということで始まったイベントです.
例年,旅先で採集した標本や自由研究のためにわざわざ出かけて採集してきた標本など,いろいろな標本が持ち込まれますが,今年は天候のすぐれなかったこともあり,全体でのべ14件の相談にとどまりました.しかし,わざわざ石川県の能登の貝化石を採集してきた小学生や,秩父の荒川の石(結晶片岩,砂岩,チャートなど)を50個ほど持ち込んだ小学生もいて,熱心な子どもの相談に,対応にあたった地質標本館,地質情報研究部門,地圏資源環境研究部門の研究者も真剣な表情で対応していました.
この日は,地球何でも相談と並行して,地質標本館に博物館実習で訪れている大学生が「恐竜折り紙」や「新島産白砂で遊ぼう」などのサブイベントで来館した子どもたちに対応しました.「恐竜折り紙」は地質標本館でもここ数年続けているサブイベントですが,全国的にも恐竜ブームのためか,人気のイベントとなっているようです.小さな子どもには折り方の難しいところもあるようですが,博物館実習生の指導のもとに皆上手に恐竜を折り上げて,記念に持ち帰りました.「新島産白砂で遊ぼう」では,「砂変幻」の原理を教えるために地質調査所OBの有田正史氏が作製した穴のあいたプラスチック皿を使って,砂が穴から滑り落ちる際の砂の動きを観察していただきました.また,ペットボトルを利用した手づくりの砂時計を作製するためのキットを配布したところ,夏休みの宿題にしようと喜んで持ち帰る子どもたちもいました.
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