GSJニュースレター NO.23 2006/8 |
日本-パキスタン共同セミナーについて ―パキスタンにおける飲料水のヒ素汚染の拡大に関わる政策的・技術的対応― 駒井 武 (地圏資源研究部門) 本共同セミナーは,上記のようなパキスタン国内の飲料水による健康影響とその社会工学的な対応を主なテーマとして,パキスタンと日本の合同で開催された.7月26日および27日の両日にわたり,約20人の聴講があり,活発な意見交換があった(写真1).パキスタン側より,パキスタン女子大学ラホール校の副学長Dr. Mateen,同学環境科学部長のDr. Cheema,さらにはカスール市の市民社会ネットワークの所長Mr. Kayani の各氏をご招待した.また,日本側からは東京工業大学の坂野助教授,愛知学院大学の森下教授が来所され,それぞれの調査結果やリスクの低減措置の検討,社会的な解決策などについて貴重な講演があった.産総研からも多数が参加し,筆者はヒ素による地質汚染の健康リスクとその軽減の方策について、報告した.また,地圏環境評価研究グループのDr. Atiq Rahman(JSPSフェロー)は合同現地調査の様子をVTRで紹介した.セミナーのなかで,当研究グループの地下水・土壌汚染の研究成果に関する見学会も行われた(写真2). セミナーでは,まずDr. Mateen およびDr. Cheema の各氏より,パキスタン国内の飲料水汚染の疫学調査の結果,地下水や頭髪中の汚染物質濃度の分析結果などの紹介があった.また, Mr. Kayani 氏からはカスール市内における飲料水による健康被害の実態と政策的な対応に関して報告が行われた.これを受けて,森下教授よりパキスタンにおける長期間にわたる調査結果とGISを用いたマッピング手法に関する講演があった.さらに,坂野助教授からは,本課題に対する社会工学的な見地からの環境対応について具体的な提案がなされた.セミナーの最後の総括的な討論会では,真剣かつ活発な意見交換が行われ,非常に意義の深いものとなった.2日間の共同セミナーを通して,パキスタンと日本の両国において今後も緊密な協力体制をとりつつ,実効性の高いリスク軽減の方策と社会への政策提言を行っていくことで意思の統一が図られた.なお,2日目の共同セミナーは,今秋パキスタン女子大学で開催する予定である. |
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