GSJニュースレター NO.23 2006/8

サマーサイエンスキャンプ2006

佐藤 努(地質調査情報センター)


写真1:メタンハイドレート燃焼実験を見る参加者.
写真2:三松三朗さん(写真右)の案内で昭和新山を登る参加者.
 日本科学技術振興財団では,「研究所に行ってみよう!」と題して,高校生を対象とした2泊3日程の先進的科学技術体験合宿プログラム「サイエンスキャンプ」を,1995年から実施しています.2006年の7・8月のプログラムは,大学・公的研究機関・民間企業の33会場で開催されました. GSJでは,北海道産学官連携センターを中心として2000年からこのプログラムに参加しており,今年のプログラムは「北海道の大地で地球上の営みを体感しよう」と題して,7月26日から28日の日程で開催されました.

 今年の参加者は,高校1年生4名,2年生4名,3年生3名の計11名で,南は宮古島,北は旭川までの広い地域から集まりました.

 まず26日の昼過ぎに新千歳空港に集合した後,バスで札幌市の産総研北海道センターに移動しました.同センター所長の北野さんの挨拶とセンター紹介の後,メタンハイドレート研究ラボ長の成田さんの案内で,メタンハイドレートに触ったり燃焼実験を間近に見たりしました(写真1).ゲノムファクトリー研究部門では,官上さんから酵母を利用したタンパク質合成の話を聞き,北海道大学の北村さんから高校や大学で行う学問の違いなどの話を聞きました.創薬シーズ探索研究ラボでは,清水さんの案内で産総研が世界に先駆けて開発した糖鎖自動合成装置GolgiTMの見学を行いました.最後に産学官連携センターの中川啓子さんの案内で,各実験室や遺伝子組み換え植物温室などを見学し,再びバスに乗って宿泊先である支笏湖畔の休暇村支笏湖へ向かいました.

 26日の夜は,まず筆者中川より北海道の火山や有珠山・昭和新山の解説を行い,続いて北海道産学官連携センターの太田さんより地質調査道具の使い方の講義がありました.さらに,サイエンスキャンプ2000の修了生でもある北海道大学大学院生の小杉さんより,サイエンスキャンプの経験から北大大学院に至るまでの勉学・研究についての話がありました.

 27日は,実際に火山活動の現場に触れる機会として,昭和新山登山と有珠山2000年噴火の西山火口の見学を行いました.まず昭和新山では,山の所有者である三松三朗さんの案内で中腹まで登り,転石の観察を行いました(写真2).昭和新山は,もともと川や麦畑であった土地がマグマの貫入によって盛り上がり,新たに山になった所です.中腹には河床堆積物や畑の下にあった有珠山の溶岩,そして貫入した昭和新山の溶岩を見ることができ,参加者はルーペを用いてこれらの岩石の違いを観察しました.続いて西山火口では,2000年に起きた噴火活動のつめ痕を見学しました.クリノメーターを用いて,マグマの貫入によって盛り上がった道路の傾きや木や建築物の傾斜を測定し,火山活動に伴う地殻変動の大きさを体感しました.いまだに噴煙を上げている火口の近くでは地熱の測定を行い,100度を超える地温に皆驚いていたようです.その後,飛んできた噴石の直撃を受けた建物や,虻田洞爺湖インターチェンジ付近の電線がゆるんだ電柱を見学しました.

 27日の夜は,まず筆者佐藤より, 2000年の有珠山の噴火活動に伴って電線がゆるんだり地下水が湧き出したりするメカニズムについて解説し,続いて北海道産学官連携センターの永石さんより,太陽電池やヒートポンプによって自然エネルギーを人間が使える形に変換するしくみの話がありました.

 最終日は,支笏湖ビジターセンターを見学し,同センターの瀬戸さんより野外に展示してある軽石や柱状節理などの説明がありました.その後,支笏湖畔の苔の洞門において樽前山の溶結凝灰岩や軽石,水流による岩石の侵食などを見学しました.

 閉講式では,修了証書授与の後,参加者から本キャンプの感想を聞くことができました.実際に見る火山や噴火の現場に圧倒されたという意見が多く,その他にはバイオ関係の研究室やメタンハイドレートの見学に興味を持った参加者もいたようです.最後に,本キャンプを支援していただいた北海道センターの後藤さん,佐藤さん,中川啓子さん,羽坂さんに感謝いたします.


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