GSJニュースレター NO.23 2006/8

産総研つくばセンター平成18年度一般公開報告

 7月23日(土),恒例となったつくばセンターの一般公開が開催されました.今年も,家族連れを中心に,5,800名の参加があり大盛況で,地質調査総合センターもいくつかのイベントや講演等を行い,いづれも好評でした.

 地質調査総合センターの取り組んだイベントの内3件を紹介します.




「つくばで火山を噴火させよう」させよう

高田 亮,川辺 禎久,古川 竜太,七山 太,下司 信夫,竹内 晋吾,及川 輝樹
(地質調査研究部門)

写真1〜6:「つくばで火山を噴火させよう」の様子.
 昨年の「アナログ実験マジックで噴火の謎を考えよう」の第2弾である.若手中堅研究者が参加し,各自のアイディアを持ち寄り,実験数を増やしパワーアップで,テーマも過激にして臨んだ.「つくば」には火山はないが,結果としては,大盛況であった.抽象的な実験や,電気・エネルギーといった目に見えない実験に比べて,ものが見える実験は,子供に訴える力が大きいと感じた.地球の現象を五感で感じてくれたであろう.全体の流れは,ビデオで火山噴火を見てもらい,疑問をもってもらう(写真1).しかし,火山の原因であるマグマは見えないし,噴火は危険だし,その規模も大きいという導入から始まる.そこで,アナログ実験といわれるマジックを紹介する.身のまわりの材料で,全体を縮小して,子供がシェフに変身してキッチンなどで実験できること強調した.世の中は数値計算が主流であるが,一般の人にはブラックボックスが多すぎる.アナログ実験は,サイエンスの基礎を含んでおり,理科教育の宝庫である.

 今回は,屋内で(1)〜(3)の実験を,屋外で(4)〜(6)の実験を実演した.(1)ゼラチンを地球に,油をマグマにみたてた,マグマの移動から割れ目噴火までを再現する実験を高田が行った.今年は応力の効果でクラックの向きが変わる実験も行った.(2)富士山の5万分の1の立体模型の上に,溶岩にみたてた,小麦粉を着色しエタノールで溶かしたアナログ溶岩を子供に流してもらう実験を,川邊が解説をしながら行った(写真2).小さい子供にも人気の実験であった.(3)火山弾と類似した構造をもったポップコーン,炒り米,スコーンなどを作って比べる実験は,及川が行った(写真3).まさにキッチンで,臭いも人を引きつけた.子供は食べるのに夢中になってしまった.大人には大変好評であった.(4)重曹にすし酢を混ぜて発泡させる実験は,爆発する噴火とそうでない噴火の違いを見せるもので,5mの高さにゴム栓や泡が飛ぶ.爆発前に安全区域への避難という臨場感あふれる企画と,ヘルメットにゴーグルという出で立ちの竹内の演技も大変うけた(写真4).(5)下司は,上昇する噴煙や流下する火砕流のアナロジーとして,水槽の底に設けられた火山体から泥砂を吹き出す実験を行い,観客を引きつけた(写真5).子供が並んで実験の順番を待っていた.(6)火山体が崩壊して起こる津波の実験は,古川・七山が行った.津波というタイムリーな現象をミニチュアで見ることができたので,4mの実験水路の両側は子供で埋まった(写真6).崩壊する火山はパチンコ玉でできていた.

 今回の実験では,実験する場所が室内と野外に分かれ,まとまりに欠けてしまった.実験の性格上,野外が好ましい実験があるので,次回は,すべての実験を野外の一箇所にテントを張ってもらいやりたい.また,実験のビデオも,各自の実験が忙しく十分活用されなかった.実際の噴火現象を是非見てほしいので,ビデオコーナーのある休息所でも用意できたらと思う.そこに,火山地質図などを貼るのも一案である.




「地質図って何?」に答えて―地質図ライブラリーが産総研一般公開に参加―

中澤 都子(地質調査情報センター)


写真1:見学ツアーの様子.
写真2:塗り絵を楽しむ子供たち.
 7月22日の産総研一般公開において,研究施設公開の一環としての「見学ツアー」が計画され,昨年10月公開開始した地質図ライブラリーが,「地質図ライブラリー見学ツアー」として参加しました.本ツアー実施の目的は「地質図って何?なんだか固くて難しそうな話?」などの疑問にお答えし,地質図をより身近に感じて貰おうという主旨です.特に小中学生の中から将来の地質学者が誕生してくれれば!と願って見学ツアーへの応募を決めました.科学技術一般の公開の中では,研究施設公開と銘打ったためかやはり出足が悪く,開始の10時になっても参加希望者0(ゼロ)!と暗雲立ちこめるスタートでした.でも,その後は受付での紹介,追加OKの案内看板作成などを行い,予想入場者数の74%を得て,15時の最終回(全部で5回)を終了いたしました.

見学ツアーの内容としては,参加の方々に充分満足していただけたと思います.

 事前準備では,大人向けと小中学生向けの2つをイメージして設定に取りかかりました.そして,展示地質図の対象地域として,日本ではつくばを中心とした関東地方を,外国ではスイスのマッターホルンを,また珍しい地図としてゴンドワナ大陸復元の地質図などを選定しました.フィールド調査の説明では,臨場感を高めようと,調査スタイル・調査グッズで身を固めた研究者に登場をお願いし,体験コーナーでは,「顕微鏡・ルーペで覗く微化石の世界」「空中写真で富士山火口や活断層を立体視しよう」「ぬり絵で作る三宅島火山地質図」を準備しました.

 入場者は入り口近くの展示物「1952年米軍作成関東甲信地域の“立体”地形図」にまず「お〜!」.貴重な地図ではありますが,小中学生には実際に手に触れて実感してもらいました.「地形図からどのような調査作業を経て地質図を作っていくのか?」,「明治時代の地質図でのつくばは?」,「地質図の色って?」,また,新刊の全国主要活断層活動確率地図展示の前では,「次の地震は?」など,質問が飛び交い,予定の30分をかなりオーバーするグループもありました.

 今回の反省点としては,1.地質図ライブラリー紹介イベントの参加区分を検討(見学ツアーあるいは施設公開など),2.PR方法の改善.キャッチコピーをワクワクするようなもので,かつ具体的に(活断層がわかる,化石を手で取って見てみる,地質図ぬり絵など)する,の2点があがり,これは次回への課題となりました.




地質標本館特別展「美しい砂の世界」と
産総研一般公開日における地質標本館でのイベントなど

目代 邦康(地質標本館)


写真1:水路実験の様子.
写真2:砂変幻の展示風景.
写真3:薄片室見学ツアーの様子.


 地質標本館では,7月22日の産総研一般公開の日から9月24日まで,夏の特別展「美しい砂の世界―不思議な砂・美しい砂・役に立つ砂―」を開催しています.この特別展では,日本と世界各地の76地点の砂の画像や,黄砂や液状化現象(噴砂)などの砂にまつわる地球科学現象についての解説,資源としての砂についての解説など,砂の様々な側面に焦点をあてて,ポスターによる展示を行っています.一般公開当日は,この特別展に関連した体験イベント,普及講演会,そして薄片室の見学ツアーを実施しました.

 標本館館内には,新島から取り寄せた流紋岩起源の白い砂の砂場がつくられました.そこには,プラスチックのお皿に幾何学模様の穴を開けた簡易版の「砂変幻」が置かれ,多くの子供たちが遊んでいきました.「砂変幻」とは,地質調査所OBの有田正史さんが考案,作成された砂のおもちゃです.砂場の周囲には,これまでにつくられた全ての「砂変幻」が並べられ,子供から大人まで,たくさんの人が手にとって楽しんでいきました.初期作品は,幾何学模様が現れるものでしたが,最近のものは茨城をはじめとして各地の地形が出現するものです.山や湖の配置と水系の関係が読みとれる大変興味深い物で,山の高さがどのようにして決まっているのかなど,深く考えさせるものとなっています.また,古代エジプトでは,巨大な花崗岩の石柱を立てるときに,砂が使われていたと考えられています.そのしくみが理解できるミニチュア版も有田さんにより作られて,展示されました.その他,ワイングラスに鳴り砂を入れて,木の棒でつついて鳴らす体験コーナーや,液状化現象が簡単に再現できる「エキジョッカー」も多数用意され,多くの人が楽しみました.

 地質標本館の玄関前では,砂を使った5種類の実験が行われました.三角州の形成実験,沈降管を使った水中での砂などの沈み方を見る実験,砂を使っての安息角の実験,ウェーブリップルの形成実験,振動により砂がどのような模様をつくるかといった実験です.当初は,時間を限定して行われる予定だったのですが,見学者が絶えなかったため,終日実験が繰り返されました.いずれも簡単な装置を使っての実演なのですが,それぞれの現象に詳しい研究者が解説をしながら実験を見せるため,非常におもしろい実演となっていました.

 薄片室のスタッフによる薄片作製の見学ツアーも実施されました.1回につき5名程度で4回行う予定でしたが,親子での参加もあり,定員を超える26名の方が参加されました.実際に稲田花崗岩の薄片を作製する工程を見学し,最後にできあがった薄片を顕微鏡で見てもらうというものです.薄片を見たこともさわったこともない人ばかりですので,全てが驚きの連続だったようです.参加者は,もとの花崗岩の状態と,顕微鏡でみた薄片との違いに大変驚いていました.また,多くの質問が寄せられていました.

 共用講堂大会議室では,上記の砂の特別展に関連して,地質標本館普及講演会として,地圏資源環境研究部門の須藤定久氏と,有田正史氏による「砂」に関する講演会が行われました.会場からは,多くの質問が寄せられ盛況のうちに終わりました.

 産総研一般公開日は,1年のうちで最も来館者が多い日で,その数は1868名にもなりました.これだけの人数にもかかわらず,今回のイベントでは,実演や自分で体験できるものが多く,職員が直接語りかけるものであったため,来館者にとっては満足度の高いイベントであったと思われます.地質標本館は,この日に1980年の開館以来70万人目の来館者を迎えることができました.今後も,より多くの方に,繰り返し足を運んでもらえるような展示やイベントを作り出していきたいと考えております.

 

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