GSJニュースレター NO.22 2006/7

第1回CCOP国内支援委員会開催
村尾 智 (地質調査情報センター)
 

 産総研地質調査総合センター(以下GSJと呼びます)は,前身である工業技術院地質調査所時代より,「CCOP(東・東南アジア地球科学計画調整委員会)」という国際機関への協力を積極的に行ってきました.CCOPは地球科学のプロジェクトやワークショップのコーディネートを通して加盟国の技術力向上をめざす機関で,現在,11か国が加盟しています.年に1回年次総会,2回管理理事会を開くほか,多数のワークショップやセミナーを開催しています.

 これまで,CCOPに対しては,GSJが単独に近い形で対応してきましたが,国際機関であり,在タイ日本国大使館公使がわが国の常駐代表であるCCOPには,GSJのみならず,国内関係機関の動向を集約して,日本国全体として臨む必要があると思われます.また,CCOP側も年次総会や管理理事会においてオールジャパンの情報が提供されることを望んでいます.

第1表:CCOP国内支援委員会の構成
所管省:外務省,経済産業省
国の機関:国土地理院,気象研究所
国際機関:アジア防災センター
独立行政法人,社団法人,財団法人等:
国際協力機構,防災科学技術研究所,土木研究所,国立環境研究所,資源・環境観測解析センター,海洋研究開発機構,石油天然ガス・金属鉱物資源機構,金沢大学,全国地質調査業協会連合会,産業技術総合研究所
(事務局:産総研地質調査情報センター)
写真:挨拶に立つ小玉委員長.委員長の右が経済産業省吉田課長,左が外務省相木課長.



 そこで,わが国としては,関連機関からなる「CCOP国内支援委員会」を組織し,CCOP年次総会で発表するカントリーレポートの準備,執筆や情報の共有を行うことになりました.GSJ内の企画部署である地質調査情報センターが事務局として折衝した結果,この委員会には以下の機関が参加することになりました(第1表).
CCOP国内支援委員会の第1回会合は2006年6月26日に経済産業省別館で開催されました.当日は,事務局による趣旨説明に始まり,委員長の選任,所管省挨拶,各機関の紹介,カントリーレポートの執筆方法と議事が進行しました.委員長には産総研の小玉喜三郎副理事長が選ばれました(写真 ).

 所管省挨拶では,外務省国連行政課の相木俊宏課長より,以下のような発言をいただきました.

「昨年の第46回CCOP管理理事会において,わが国は,本年から来年にかけての同管理理事会の議長国に選出され,わが国の佃 栄吉CCOP常任副代表が議長を務めている.佃常任副代表のリーダーシップの下,地域の地球科学分野における協力がさらに発展することを期待したい.わが国は,地球科学分野での地域協力で更なる貢献を期待されており,CCOPとの関係で重要な時期を迎えている.近年,地球科学分野での課題は複雑且つ多様になっているが,国内の各方面からのご協力を得て本委員会が立ち上げられることは有意義である.わが国は,1966年のCCOP創設以来,その活動に様々な協力を行ってきている.最近では,『人間の安全保障』の考え方を取り入れた活動も行っている.このようなCCOPの志向は歓迎すべきものである.」

 つづいて,経済産業省知的基盤課の吉田雅彦課長より次のような挨拶をいただきました.

「経済産業省にとって地質の調査は重要なミッションである.歴史的には地下資源が主流であったが,現在では,防災,環境などさまざまな分野を取り扱っている.今後さまざまな機関との連携を図りつつ,地球環境など大きな視野で進めていきたい.CCOPおよびアジア太平洋地域において,日本の果たす役割は大きい.日本のリーダーシップにおいて,今後各方面と協力しながら,国際的な連携を進めて行きたいと考えている.」

 このあと,会議では,各機関の活動紹介とCCOPに提出するカントリーレポートの執筆方法について審議が行われました.事務局からは次のような説明をいたしました.
「カントリーレポートは,Geo-Resources, Geo-Environment, Geo-Informationの3つの章から構成される.カントリーレポートの執筆は,1.CCOPにとって年間の活動を総括するもの,2. 日本にとって,CCOPという政府間におけるステータスの確保,活動ポテンシャルの明示,アジアにおけるイニシアティブの発揮につながる,3.参画機関にとって国際的な位置づけを明示できる.4.質の高いレポートを例示することで,他国のカントリーレポートの改革を促す効果がある.」
この後,審議に移り,レポートについては各機関のうち執筆を担当できるところが,国内・国際双方の成果を,アジアを中心に記述すること,提出された原稿は編集委員会が8月中に編集すること,CCOP年次総会で発表後はレポートの別刷を作成して配布すること,別刷には著者名を記載すること(CCOPで発表する際には著者名が出ない形になるため)などが合意されました.

 CCOPは加盟国の意思疎通が極めてよく,また,さまざまな自己改革を進めるなど,優等生的な国際機関です.そして,わが国にとって次のようなメリットがあります.

1. 外務省,経済産業省と連携しながら技術面でアジアに貢献できる.
2. CCOPを通じて他の国際機関や加盟国の関係機関と交流できる.
3. アジアにおける防災,環境,資源の情報を得ることができる.
4. アジアにおける地球科学関係のニーズを把握できる.
5. 国際プロジェクトや会議の支援組織としてCCOP事務局がきわめて有能である.
6. 日本の外交の柱である「人間の安全保障」について,アジア各国と協力することができる.  

 第1回CCOP国内支援委員会における今回の審議内容は,10月29日から11月3日まで韓国の大田(デジュン)で開催される第43回CCOP年次総会の発表に反映されます.また,この年次総会の結果を報告し,以降の方針を協議する第2回CCOP国内支援委員会を12月に予定しています.今後ともCCOP国内支援委員会が活用され,上記メリットを生かしてより良い国際業務が展開できるよう,産総研は同委員会を強く支援してまいります.

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