GSJニュースレター
NO.20
2006/5
活断層研究センター第5回研究発表会
近藤 久雄・吉田 邦一 (活断層研究センター)
写真1:岡村行信チーム長による研究発表会趣旨説明の様子.
写真2:ポスターセッションの様子.
図:断層モデルと応力場の組み合わせを変えたときの,最終すべり量分布(講演「動的破壊シミュレーションでみる連動型地震」(加瀬)より).
活断層研究センターは,2006年4月26日(水),秋葉原コンベンションホールにおいて,センター発足以来5回目となる研究発表会を開催した.「連動型巨大地震−その解明と予測に向けて」というテーマをもとに,センターの若手研究員4名に加え,外部から堀 高峰(海洋開発研究機構),藤井雄士郎(建築研究所)をお招きして講演が行われた.年々増加傾向にある参加者数は 、今年も最多記録を更新し 、外部の方196名 、産総研41名の合計237名であった.参加者の所属内訳では,特に,地質関連及び電力関連企業が目立った.参加者が増えた背景には,2004年のスマトラ沖地震を契機に連動型巨大地震への関心がとりわけ高まっていること,および活断層研究センターの社会的認知度が向上し続けていることにあると思われる.
活断層研究センターはその設立以降,地質学(古地震学)を基礎とした関連分野の融合を掲げ,活断層を震源とする地震,海溝型地震,地震災害予測の研究に取り組んできた.今回は,複数の破壊領域が連動して生じる巨大地震や大地震について,活断層研究センターならではの多彩な講演が行われた.海溝型巨大地震による津波や地殻変動,陸上活断層による連動型大地震の地形地質学的証拠,海溝型地震の繰り返し間隔の数値シミュレーション,複数セグメントの断層破壊過程のモデル計算,2004年スマトラ沖地震の津波の計算,巨大地震による長周期地震動といった計6件の講演は,最新の知見を交えて紹介されると共に,現状の課題や新たな解決策の提言が意欲的に行われた.また,講演会場の後方に設けた発表ブースでは,昨年刊行された全国主要活断層活動確率地図,平成17年度より開始した文科省委託の活断層の調査の速報,国内外の海溝型地震の古地震調査,経産省委託の想定南海地震による地震動予測といった,平成17年度の研究成果をまとめた24件のポスター発表や,現在改訂を進めている活断層データベースのデモンストレーションを行った.
来場された一般参加の方からは,質疑応答やアンケートを通して,発表会の内容や進行方法からセンター全体の研究内容や今後の方針に至るまで,多数の貴重なご意見,ご要望を頂いた.この中には,理学的な研究成果の工学分野への展開に際し,まず理学的成果を整理し,既にどのように社会の中で役に立っているのかを明確にした上で,今後の社会貢献のあり方を模索することも必要ではないかという重要な問題提起も含まれている.今回頂いた多数のご意見は真摯に受け止め,センターの活動方針を検討し,継続して‘社会の役に立つ研究’の遂行と成果の公表,普及に努めていきたいと考えている.
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