GSJニュースレター NO.19 2006/4

地質標本館特別展「日本の地質学の草創期と現在の地質学−ナウマン来日130周年−」および
普及講演会「ドイツ人地質学者ナウマンと日本の地質学の発展−そして今−」

目代 邦康(地質標本館)

写真1:特別展でのパネル展示.
写真2:普及講演会での矢島道子氏.


 2005年から2006年にかけては,「日本におけるドイツ(Deutschland in Japan)年」です.ドイツを紹介するイベントが日本各地で開催されています.地質標本館でも,ドイツ年を記念して標記のイベントを実施しました.130年前にドイツ人地質学者ナウマンが来日し,日本の地質学がスタートを切りました.130年前のナウマンにまつわる史実と,その後どのように地質学は発展してきたのか,現在の地質調査総合センター(GSJ)とドイツ連邦地球科学天然資源研究所(BGR)との活動を通して俯瞰し,そして,今後進むべき方向を見出そうという企画です.

 1月26日から4月16日まで開催された特別展では,日本の地質学の草創期についての展示と,ドイツ連邦地球科学天然資源研究所と地質調査総合センターとの活動を紹介する展示とが行われました.前者は,地質学史の分野で精力的に活動されている矢島道子氏の協力を得て,ナウマンがどのような仕事をしたのかが,当時の図表や写真を使って分かりやすく解説されていました.日本の地質調査所設立について建議したのは,このナウマンですが,その経緯や設立当時の状況についても詳しく述べられていました.両研究所の研究紹介では,地質図作成,放射性廃棄物処理問題,資源開発,災害研究などの分野毎に成果が示されていました.両国の研究を比較することにより,その到達点や今後の課題などが浮き彫りになりました.

 3月26日に開催された講演会では,矢島道子氏に「ナウマン−日本の地質学の草創期」と題し講演して頂きました.ナウマンの人となりや,ナウマンが日本で行った研究がどのように評価されてきたのか,さらに明治期の日本の地質学界とナウマンの置かれた状況の関係についての講演でした.従来のお雇外国人論と一線を画す,矢島さんオリジナルの研究成果を講演され,大変興味深いものでした.続いて,地質情報研究部門の高橋雅紀氏により,「過去(2000万年前)にさかのぼって今(地震災害)を知る」と題して,関東平野の地下構造に関して,最新の研究成果をふんだんに盛り込んだ講演が行われました.最後に,地質標本館の青木正博氏により,「ドイツにちなんだ鉱物」と題して,ゲーテなどのドイツの有名人や地名にちなんだ鉱物の紹介がありました.また,先だってBGRから贈られた重晶石と岩塩鉱物の標本(GSJニュースレターNo.18参照)の紹介も行われました.この講演会には,遠方からの参加者も見られ,会場はほぼ満席となりました.会場では,ナウマンの資料集や矢島道子氏の著書の販売,ドイツ年記念ピンバッジの配布も行われました.矢島さんにサインを求める方や講演者を囲んで質問を続ける方も見られ,盛況の内に閉会となりました.来館者の方々には,地質学の多面的なおもしろさを理解して頂けたと思います.

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