GSJニュースレター NO.17 2006/2 |
第5回地質調査総合センターシンポジウム 「社会のための地球科学 - 日本とドイツの地球科学における交流」 渡辺 真人 (地質調査情報センター)
地質調査総合センターの前進である地質調査所は,ドイツ人地質学者ナウマンが明治政府に提出した意見書に基づいて1882年に設立されました.現在に続く日本の地質図の作成はこのときにナウマンの主導で始まったのです.ドイツへ留学した地質学者も多く,当時のドイツの地質学は日本の地質学に大きな影響を与えました.このような両国の過去の交流について振り返り,現在の互いの研究について理解を深め,未来の研究交流へつなげよう,というのがイベントの目的です. シンポジウムには約60名が参加しました.シンポジウムの冒頭,小玉副理事長が挨拶にたち,両研究所が社会のために研究協力を深めることを期待したいと述べました.次にBGRと地質調査総合センターの組織と研究の概要が紹介されました.それからユネスコの元地球科学部長,現ユネスコシニアアドバイザ‐である Wolfgang Eder氏が,ジオパーク(地質公園)とその活動を通じた地球科学の普及の重要性について講演しました.地質調査総合センターは関連学会・団体とともにジオパークを推進しています. そのあと,地質図の歴史と地質図の将来,ドイツにおける陥没や地すべりなどの地質災害,日本の地震・火山,核燃料廃棄物処分,ガスハイドレート,地質標本館の普及活動などをテーマとして,両研究所から講演があり,最後に総合討論が行われました. 地質情報に関して,誰にどんな情報を提供するべきか,また情報をどう分かりやすく伝えるか,という問題が提起されました.Webなどインターネットを用いた地質情報の公開のためには地質情報の標準化が必要であり,ヨーロッパの標準を主導するBGRと,アジアの標準を主導する地質調査総合センターが今後も連携していくことが確認されました.次に,両研究所が,両国の資源の安定的獲得のためにどんな研究をするべきか,という議論がありました.さらに,アジアの発展途上国の地質災害にたいして,両研究所が国際機関を通して協力しあって援助を行うことが提案されました.最後に,両研究所が今後様々な分野で情報交換を行っていくことが確認されました. シンポジウムのあと,特別展示の準備が整った地質標本館でレセプションがおこなわれました.今回のイベントを記念して,BGRから鉱物標本と1920‐30年代のドイツの貴重な地質図が贈呈されました. 今回のイベントを通じて,BGRと地質調査総合センターの相互理解が深まりました.現在将来の共同研究に向けての打合せが進行中です. |
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