GSJニュースレター NO.15 2005/12

最近の学会から

日本地熱学会平成17年度雲仙大会
水垣 桂子 (地圏資源環境研究部門)


小浜温泉の源泉のひとつ,海岸の間欠泉.
 今年度の日本地熱学会学術講演会は,噴火の記憶もまだ新しい雲仙火山の麓,日本有数の地熱地帯のひとつである小浜温泉のウェルハートピア雲仙小浜で開催された(11月18日〜20日).平成15年からレギュラーセッションのほかに特集的なオーガナイズドセッションが組まれるようになったが.今年はそれが4セッションに増え,なるべく他のセッションと重ならない時間帯に設定された(講演会場は2室).地の利を生かしたオーガナイズドセッション「島原半島の火山・地熱・温泉」「温泉の多目的利用」は一般にも公開され,少数ではあったが地元住民も参加していた.また,特別講演「雲仙火山噴火と科学掘削」も行われるなど,地元密着型,かつ地熱〜火山をシステムとして総合的に捉えようという姿勢の見えるプログラムとなっていた.

 レギュラーセッションでは,国内でのプロジェクトがひととおり終わった高温岩体が1セッションに減った一方,最近注目の地中熱利用はレギュラー3セッションの他オーガナイズドセッション「地中熱利用の技術講座に向けて」が行われた.

 また「地熱利用概論」のセッションは立ち見もぎっしり並ぶほどの盛況であった.このセッションでは特に温泉や地熱以外の自然エネルギーも含めた総合利用システムの提案が注目されたのであろう.

 近年は主に社会的要因により国内での地熱発電量の増加は頭打ちとなっているが,発電にこだわらずもっと視野を広げて,一般のイメージでは「地熱」の範疇に入らないかもしれない地中熱までを地熱資源として多様な形態で利用する,また地熱以外のエネルギーも含めた持続可能な総合的システムの設計,といった方向性が明瞭になってきたように思われる.個人的には 地中熱とガス発電のハイブリッドシステムが逆転の発想のようで興味深かった.もちろん基礎的な研究や技術開発も着実に行われており,レギュラーセッションで多数の発表があった.

 

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