GSJニュースレター NO.14 2005/11

最近の学会から
日本地震学会2005年秋季大会報告
岡村 行信 (活断層研究センター)

 日本地震学会2005年秋季大会は10月19日〜21日に北海道大学で開催された.今回の学会では,地震学会のレギュラーセッションだけでなく,沈み込み帯に関連した特別セッションが3つ開催された.筆者は2日目以降に開催されたそれたの特別セッションを中心に参加したので,その概要を報告する.

 2日目の午前中から午後の前半にかけて,「プレート境界域のモニタリングとアスペリティの検証」があり20件の口頭発表と13件のポスター発表があった.東海地震や関東地震に関連したプレート境界の挙動が測地,地震、反射法などのデータに基づいて議論されたほか,最近発生した宮城県沖地震・新潟県中越地震に関する報告があった.また,海底地殻変動を検出する技術開発が進みつつあることが発表された.昼休みには8月16日の宮城県沖地震に関する緊急報告会が行われた.午後の後半には「今北海道東部で何が起こっているか?」が行われ,2003年十勝沖地震や千島海溝沿いの多様な地震活動や地震サイクルと太平洋プレートの沈み込みプロセスとの関係など12件の口頭発表と13件のポスター発表が行われた.3日目の午前中には「沈み込み帯の超巨大地震-スマトラ型の巨大地震は日本周辺でも発生するか?」が行われ,17件の口頭発表と11件のポスター発表があり,昨年12月のスマトラ-アンダマン地震に関する様々なセッションのタイトルにある日本での巨大地震の可能性の検討は,地形・地質学的な調査に基づいた研究が不可欠であるが,発表件数は全体の半数以下しかなく,まだ研究が不十分であることをうかがわせた.

 最近は,地震の観測手段とデータの解析手法も多様化・高精度化してきたうえ,大きな地震の発生も増えているため,一つの地震について様々な解析結果が報告される.地質学が専門の筆者にはそれらの全てをフォロー出来ないが,地震時及び地震間にプレート境界で何が起こっているかがかなり詳しく明らかになってきていることは実感出来る.一方で,海溝型地震を本当に理解し,地震予知や災害予知を実現するには,まだ時間がかかるという感想を持った. 

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