GSJニュースレター NO.14 2005/11

巨大地震津波痕跡の根室公開発掘調査と関連講演会の報告
中川 充 (北海道産学官連携センター)

写真1 根室市i総合文化会館にての関連講演会.
写真2 根室万部沼低湿地に掘られたトレンチ(溝)で,泥炭層中に津波堆積物が何層もはさまれているのを確認する参加者.
北海道開拓記念館の館外行事「飛び出せ開拓記念館」では,地元根室市の協力を得て,10月15日(土)に「根室市の地下に眠る巨大地震津波痕跡の公開調査」を開催しました.当日はまず根室市総合文化会館においての関連講演会から始まりました.『次の根室半島沖大地震:温故知新』と題した北海道大学地震火山研究観測センター所長の笠原 稔教授の講演に引き続き,産総研地質情報研究部門の七山 太博士が写真や地図をふんだんに使って,わかりやすく現場の状況と観察ポイント,そこから得られる情報の読み解き方を解説しました.

 土曜の午後という時間設定が奏効したのか,定員の100名を数十名上回る来場者があり,足元に残された痕跡そして来るべき地震津波への感心の高さをうかがわせました.その証拠に,小雨に煙るあいにくの天気にもかかわらず,公開トレンチ現場への井同するバスは満員で,自家用車組を含めてほとんどの参加者が実際の現場での観察を行いました.中には制服の自衛官も含まれ,土地柄と事態の緊迫度を感じさせる雰囲気でした. 

 北海道東部太平洋沿岸,十勝海岸〜根釧海岸地域は,千島海溝において周期的に発生する地震・津波の被災常襲地域であることが知られています.近年,この地域の低湿地において,過去4000年間にわたって堆積した泥炭層中に,異常な規模の津波によって海から運ばれてきた津波堆積物が9層存在することが,産総研や北大などの研究者によって明らかにされてきました.

 こうした調査研究の成果を論文や出版物での発表だけにとどまらず,一昨年の厚岸に引き続き,現地地元の方々に印象深く理解される形で還元した絶好のイベントになったと考えます.また,北大・産総研の包括協定の一環として,地質の分野における研究成果の独特かつ効果的な発信であると位置づけられましょう.市長自ら深い関心を示して激励をいただき,多くの行政の担当者が協力してくださったことに感謝したいと思います.


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