GSJニュースレター NO.13 2005/10 |
日本地質学会第112年学術大会および地質情報展に参加して 脇田 浩二 (地質情報研究部門) 平成17年9月18日(日)から9月20日(火)にかけて,日本地質学会第112年学術大会が開催された.場所は,京都大学総合人間学部キャンパス(吉田南構内)である.参加者は約1100名であった.地質調査総合センターからも多数参加している. この大会では,通常の学会発表(口頭・ポスター)や地質巡検以外に,一般公開シンポジウム,市民講演会,小さなEarth Scientistのつどい〜第3回小,中,高校生徒「地学研究」発表会,ランチョン・夜間小集会などが開催された.そして,例年と同様,地質調査総合センターが主催の地質情報展を,同会場で開催し,地質調査総合センターの活動の普及に努めた. 学会発表では,8つのシンポジウムと29のテーマについての一般発表があった.そのすべてについて感想を書く訳にいかないので,とても強い印象を残したシンポジウムについて,行事委員からみたポスターセッションについて,さらに地質調査総合センターが主催した地質情報展について,吉川敏之,斎藤 眞,宝田晋治が,以下にそれぞれ記述する. |
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シンポジウム 社会に広がる地質学へ:地質学の普及と学会の社会的貢献」について 吉川 敏之(地質情報研究部門) 日本地質学会京都大会の初日,「社会に広がる地質学へ」と題したシンポジウムが開かれた.地質調査総合センターから参加された方も多いかと思うが,なかなか有意義なシンポジウムだったと感じたので,以下に感想を記す. 講演者は,地質調査総合センターの湯浅さんを始め,博物館,JAMSTEC,小学校,高校,大学など幅広い機関から集まり,地質学の普及のためのそれぞれの現状と熱意を紹介してくれた.おかげで,現在どこでどんな取り組みがなされているのかを知ることができた.その一方で,(特に学会として)誰が何をつくるべきかという具体的な提案はなかった. 世話人及び複数の講演者から,社会に対する地質学者の研究説明責任と,各組織の連携の必要性が訴えられていた.「連携」とは程度の差はあるものの「産官学連携」を意識しており,特に博物館などでのイベントの協力は要望が強そうであった.博物館は一般に開放されてはいるが,学芸員の専門分野以外の質問・要望に強くない.大学や研究所の専門家と定常的に協力できれば,これらのニーズの取りこぼしが少なくなるとのことである.印象として,地質学も学問が細分化したため,専門分野の特徴は上手にアピールする一方,「地質学」という全体像では一般の興味がとらえにくくなっているのではと感じる. 博物館の立場からはまた,「天文は夢を売れるから人受けがよい」という話があったが,地質学にも夢はあるはずである.小さい頃,自分があこがれたものを見直してみればわかるであろう.その夢をもっと売るべきである.その点では,地質学史のコンパイルや解説は,それなりの説得力を持ちうるかも知れない(「プロジェクト X」風ではあるが).更には現在の地質学でまだ解明されていない問題,未知なる領域を訴えることも,次世代の研究者の担い手たちにはアピールとなるかも知れない. 一般へのプレゼンテーションでは,やはり視覚に訴えることは大切である.確かに天文学や気象学では非日常的な動きのある現象で見る人を引きつけることができる.普及活動には,質の高いカラーの絵や図または写真を,継続的に生産する努力が必要であろう.今回の発表では,JAMSTECが目をひいた. 地方自治体向けの普及活動として,地質学的な天然記念物の指定を積極的に推薦してはという意見があった.これは地質学的な文化財保護にも,地方自治体へのアピールにもなる.ただ,昨年の千葉大会の夜間シンポジウムで話題になったように,指定するだけではそのとき限りになってしまう可能性が大なので,記念物や文化財をどう利用していくかアフターケアを考えることが重要である. 防災意識の啓蒙としては,大縮尺のマップの持つ力が大きいと感じた.これに洪水や震災,火山災害などの実例を重ね合わせると,非常にインパクトがある.どんな災害も復旧と時間の経過によって忘れられてしまう.記録にとどめ適所に配信する努力が必要である. 本シンポジウム及び学会全体を通じて,いろいろな組織があり,さまざまな取り組みが行われていること,それぞれの立場や得手不得手があることがよくわかった.同時に,今はまだ群雄割拠の状態とも感じた.プレーヤーは揃いつつあるけれど,それを統率するオールジャパンの監督を皆が求めているような,その役割を学会が担えるかどうか探っているような状態とも言える.今回と同様のシンポジウムは,来年の大会でも開かれるようなので,今後の進展に期待したい. しかし,学会は学会として普及活動してもらうとして,産総研地質調査総合センターはどうするのか,各研究者や組織はどのような役割を担うべきなのかを考えることも必要であるし,体系の整備は急務であると思う. |
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ポスターセッション 斎藤 眞 (地質情報研究部門) 今年のポスター発表は,2会場に分かれて、1日100件程度行われた.ポスター発表が増え、会場が狭い上に、企業展示にスペースを喰われ,ポスターの間隔は例年よりもさらに詰まった状態になった.このため会場は暑く,また1つのポスターで議論が始まると,隣のポスターは見えず,また通り抜けもままならない状況であった.参加者がポスターでつっこんだ議論をすることに慣れてきた今日,ポスターの隣との間隔を空ける(例えば2枚1組で並べる),また後ろとの距離も充分にとるといった配慮が必要と感じた.内容は,上手にプレゼンができている人と,そうでない人がはっきり分かれたという印象を受けた.来年(高知大)も,広いポスター会場の確保は厳しいようだが,できれば大きな会場が確保され,活発な議論が行われることを望む. ポスター優秀講演賞も例年通り行われたが、今年は、産総研地質調査総合センターから井川敏恵,川上俊介の両特別研究員が受賞した.特に川上氏は3年連続の受賞で、賞賛に値する. 最後に、行事委員として、より良いポスターの書き方を伝授する。 今ではほとんどのポスターが,大型プリンターを使って作成したものとなる.その中で,「これは」と思わせるポスターの作り方にはこつがある.最重要ポイントは,そのポスターで何が言いたいかが簡潔にわかりやすく書いてあることである.結論が小さい文字で下の方に行っていては,その段階でボツとなる.本年の大多数のポスターが「結論はどこ?」といった状態である.「ねらい」,「結論」をはっきり示してあるのが良いと思う. そこがわかると,読み手は論理構成を見てくれる.要点ごとにバックに色を付けたり,矢印をつけたりして,発表者が結論に至った理由を理解しやすいようにすると良い.この際,長い文章は禁物である.流して読む人のために,大きな文字で見出しを書き,中身に踏み込んで読んでくれる人のために,少し文字を小さくして説明を書くようにする.しかし,その説明も1項目3行までが読み手の限界である.できれば,図から読めるような展開が良いと思う.また,2m下がって読めないような文字サイズでは困るし,行間が狭いと読みづらくなり,読んでもらえない.フォントは,明朝体系は避けるべきである.一般には丸ゴチック系が見やすい.ただ,見出しなど,どうしても読んでもらいたいところは,「おっ」と思わせるフォントも良い.またバック全体に色をつけて,引きつけるのも有効である.ポスター発表であろうが,口頭発表のパワーポイントであろうが,はたまた地質情報展のポスターであろうが,ツボはみな同じである.自分が読み手になって見たときにわかりやすいのが重要となる.持って行く前に廊下に貼って人に見てもらうのも良いと思う. |
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地質情報展2005きょうと-大地が語る5億年の時間(とき)-に参加して 宝田 晋治 (地質情報研究部門)
「体験コーナー」では,ハンマーを実際に握って行う石割り,顕微鏡観察,エキジョッカーによる液状化体験,アンモナイトの化石レプリカ作り,鳴り砂体験,水槽実験,砂箱による砂の造形美体験,パソコンによる地学クイズなど,子供向けのさまざまなコーナーが賑わった(写真1).「展示と説明のコーナー」では,「5億年の地史が語る京都の生い立ち」「京都盆地の第四紀地質」「舞鶴帯-古生代島弧の断片」など京都周辺の地質の成り立ちを多くのポスターでわかりやすく解説していた.また,グラブ採泥器を使ったマンガン団塊の採取,3D地球儀,火山-噴火の脅威とその恵み-,日本の地熱・京都の温泉,京都の活断層Map,新潟県中越地震やスマトラ沖地震,地下水観測,石油・天然ガス,鉱物資源図中部近畿,近畿の骨材資源,画像による砂の観察,地球化学図,地質図の世界など多くの展示があり,それぞれ大変盛況であった.また,ようやく完成した20万分の1デジタル地質図や20万分の1日本シームレス地質図の3m四方の床張りも行った(写真2).それを利用したフライトシミュレータも子供たちに人気であった.「特設コーナー」では,青木地質標本館長によるなんでも相談コーナーや地質調査総合センターの出版物の展示販売も行われた. 来場者は,日本地質学会の参加者に加えて,1日目と2日目は3連休と重なっていたため,一般の子連れの方の来場もかなりあった.また,1日目は,地質学会の会場で近畿地域の中高校生によるポスター発表が行われていたため,中学高校の先生や中高校生の来場者もかなりみられた.3日目は,授業の一環として50人の小学生が団体で見学に来ていた. 展示内容の詳細や当日の様子は,下記のHPで詳しく紹介している.来年は高知で開催予定であり、多数の来場を期待している.なお,地質情報展は,今年の日本地質学会において,地質学会表彰を受賞した.今後も地質調査総合センターの中心行事として、職員全体で支えていきたい. |
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独立行政法人産業技術総合研究所
地質調査総合センター |
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