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日本の火山と火山地質図「伊豆大島火山」
下司信夫(活断層・火山研究部門)
IZU-OSHIMA-VOLCANO written by Nobuo Geshi (Geological Survey of Japan, AIST)

伊豆大島火山

御神火と呼ばれる噴火をくりかえしている三原山。
手前に伸びている黒い溶岩は1986年11月に
山頂火口から流出した溶岩流です。

相模湾に浮かぶ北北西?南南東13km、東北東~西南西9kmの火山島で、主に玄武岩からなる成層火山です。伊豆大島火山は数万年前から活動を始め、主成層火山体と北北西?南南東方向の割れ目火口から噴出した多数の側火山から構成されています。伊豆大島最大の集落である元町から南に向かう一周道路沿いには、伊豆大島の成長にともなって島内に降下・堆積した火山灰やスコリアの積み重なりを見ることが出来ます。この露頭は「地層大切断面」として広く知られています。また、島の南部の海岸付近には波浮港などのタフリングやマールが発達しており、マグマと地下水との反応によって激しいマグマ水蒸気噴火が繰り返し発生していたことがわかります。

伊豆大島南西部にある「地層大切断面」。カルデラ形成以前の約14000年間に噴出・堆積したスコリアや火山灰の積み重なりを観察できます。こうした地層の解析によって、火山活動の履歴を読み解いてゆきます。
伊豆大島南端にある波浮港は、9世紀に島の南東部で発生した噴火割れ目が海岸部まで到達し、地下水とマグマの接触によっておこった激しいマグマ水蒸気爆発によって形成されたマールです。

伊豆大島の山頂には広い陥没カルデラがあります。この陥没カルデラは5世紀、7世紀の爆発的噴火によって生じたと考えられています。カルデラ形成後、 1777年までおよそ10回の大噴火があったことが地質調査から明らかにされています。これらの大噴火では島の内外に大量のスコリアや火山灰が堆積したほか、規模の大きい溶岩流が流れ下っています。現在の山頂部を形成する三原山は主に1777年の噴火(安永噴火)で形成されたと考えられています。1777年噴火以降、三原山火口からストロンボリ式と呼ばれる赤い溶岩を吹き上げる噴火を繰り返し、その噴火は「御神火」と呼ばれ島の人々に崇められてきました。最近の比較的大きな噴火は1986年(昭和61年)に発生しました。

1986年噴火は、三原山火口からのストロンボリ式噴火で始まり、溶融した溶岩を高く吹き上げる溶岩噴泉とよばれる噴火が数日間続きました。三原山火口を満たした溶岩は火口縁からあふれ出し、三原山の山腹を流れ下ってカルデラ床に広がりました。その後いったん噴火は小康状態になりましたが、突然カルデラ床から激しい割れ目噴火が始まりました。割れ目火口は次第にカルデラの外にまで拡大し、割れ目火口から流れ出した溶岩流の一部は山麓の元町集落に迫りました。そのため、全島民が一時島外に避難することになりました。その後現在まで比較的静穏な状態が続いています。

地質調査総合センター発行
「伊豆大島火山地質図」 1:2.5万。
¥1,835
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火山地質図~火山のおいたちをさぐる

 

火山地質図とは、日本の主な活火山を対象に、その火山の噴火史に注目して作られた地質図です。火山地質図には、溶岩や火砕流といった火山噴出物の分布や、噴火口の位置など火山の構造に関する情報が記載されています。また、その火山の形成史や活動に関する解説が付けられています。これまでに全国11の活火山の火山地質図が出版され、防災や火山研究の基礎データとして利用されています。