・陥没カルデラ内部が良く見えました。
・噴気孔周辺には、かなりの量の黄色い物質(硫黄)が付着していました。
・陥没カルデラ内部を赤外線カメラで撮影(熱映像)しました。
※測定温度の最高値は366.3℃
・陥没カルデラ縁の北西~西~南側をぐるっと撮影しました。
・都道沿いに一周ぐるっと撮影しました
・COSPEC観測ヘリに空中でお会いしました
東京ヘリポートより、警視庁航空隊の 「おおとり6号(ベル412ヘリ)」に搭乗。 いつもながら、ヘリ観測を支えて下さった皆様方に感謝します。 気象条件が良かったこともあって(微風、晴天)、 ヘリクルーの方々は研究上の要望にきめ細かく対応したフライトを して下さいまして、大変ありがたく思いました。
おおとり6号にはスライド式の小窓がついており、安全に観察することができる。
都内。視程はあまり良くない。
9時15分 横須賀通過。
9時21~24分(城ヶ島) 海岸線通過。
9時41分 利島通過。
100kt(1kt=1.85km/h)にて2000ftを巡航。
9時30分頃~40分頃にかけて、遠方に三宅島の噴煙を確認。
9時40分頃から、噴煙が見えなくなった。
9時48分に、再び三宅島の噴煙を確認。
9時50分には、また噴煙が見えなくなった。
9時51分には、再び三宅島の噴煙を確認。
このように、見えたり隠れたりするのは、
噴煙は高度が変化するためと考えられる。
同日神津島からの目視観測によれば、
数分の周期で大きな煙の塊が上昇するたびに、
噴煙の最高高度がおよそ500m程度高くなることが確認されている。
左:噴煙。
微風(神津島空港9時00分にて南西の風2m/sec)のため噴煙は垂直に上昇し、
その後北東にゆっくり流れる。
右:災対関係者の方々を三宅島で降ろすため、伊豆のヘリポートに着陸。
10時09分、着陸してすぐ離陸。
南東から見た噴煙。最高高度は約2000m、北東にたなびく噴煙の高度は約1500m。
北東からみた噴煙。
南からみた噴煙(御蔵島→三宅島の移動途中)。
西からみた噴煙(神津島→三宅島の移動途中)。
それぞれ、北東、北、北西方向から見た噴気孔。 白煙(水蒸気)の量は少なめにみえるが、劇的に減ったとは思えない。 噴気孔の周囲、 および噴気が出ていると思われる場所には黄色い物質(硫黄)が付着している。 硫黄の量は、筆者(宮城)がこれまでのヘリ観測で見た中では、今回が一番多い。
主噴気孔を熱赤外線カメラで撮影したもの。 噴気孔の温度は時間とともに刻々と変化しますが、 今回の最高値は366.3℃でした。 この温度は、 筆者(宮城)がこれまで行なった3回の温度観測の中では最高温度 (314℃@2001年1月15日;131℃@2001年2月12日) です。 噴煙の出ている場所と温度の高い場所はよく対応し、 また、噴気が少なくても硫黄の付着している個所は、 温度が高いことが分りました。
画像をクリックするとムービー(1Mb)がダウロードされます。
※なお、QuicktimeMovieを見るには、QuickTimeソフトウェアが必要です。
陥没カルデラにある二つの大きな水溜まりのうち
左:噴気孔から遠いほうは赤みがかっている。
この水溜は2001年3月中旬以降は緑色が強くなる傾向があったが、
今回の変化はその傾向に逆行するものである。
右:噴気孔に近いほう。
この水溜は2000年11月下旬に赤→黒緑へ変化したが、
2001年2月下旬からは黒緑→赤黒に徐々に変化してきた。
今回の変化はその傾向に沿うものである。
陥没カルデラの東側にある、1535噴火口の水溜まり。鮮かな水色である。
観測を便利にするため、 筆者(宮城)は三宅島の陥没カルデラリムの特徴的な地形に符号をつけています。 それらの符号は、三宅島を真上から見て「すおう穴」から反時計回りにabc、 時計回りにA,B,C(但し一部変則的)です。 それらのまとめは ここ(東宮さんのページ)にあります。
今回の観察で、最近、雁行状の亀裂(m,n付近)のmがわが崩落したことが、 明かになりました。 崩落前の写真(by中野@GSJ;2001年4月23日撮影) と、 今回(崩落後)の写真(by宮城@GSJ;2001年5月14日撮影)を ごらんください。 当該個所の崩落に伴なうと考えられる土砂は、 陥没カルデラ壁を滑り落ち、 一部は水溜まり(噴気孔に近いほう)に達したようです。
カルデラリム南西がわ全景。
崩落部(画面中央、やや左上)と雄山登山道路(画面中央~中央やや右上)の関係。
以下、すおう穴から反時計回りの順に、カルデラリムの写真を掲載します。
左:a
(すおう穴)
中:b~c
右c~d~e
左:d~e~f~g
中:f~g~h
右:f~g~h
左:(h)~i~j
中:k~l
右:(l)~m~n
左:m~n
中:n~u
右:u~o (oは埋没しかかった雄山登山道路)
左:p~q
中:p~q~(r)
右:r~(s)
左:r~s
中:s~(t)
右:t~w
左:w~(x)
中:(w)~x
右:(x)~M~L~...a
※wとxの定義は近々に発表します。
島内の樹々は高い場所ほど枯れている傾向がありますが、 その程度は場所や、樹木の種類により大きく異なるようです。 そこでその程度を明らかにするため、 比較的低空から三宅島の都道沿いにぐるっと一周写真撮影を行いました。 その結果、 島の東側は標高の低いところまで、 樹々(特に杉などの針葉樹)の色は茶色になっていることが判明しました。 もしかすると、冬の間卓越していた西風によって東山麓に運ばれた火山ガスが、 東側の樹々ダメージを大きくしたのかもしれません。
雄山山麓の樹々の様子(概観):
左:西側の山腹は、ほとんど緑がない
(注:山頂に近いので降灰とガスのダブルパンチ)
(注:海岸沿いは緑があるが、これには写っていない)。
中:南側は、標高の高い場所でも緑が目立つ。
右:東側は、標高の低いところまで枯れ木が目立つ。
標高(と地形?)の効果:
三宅高校、畜産試験場、大路池、を北東側から見た様子。
ここでは針葉樹と判断される(樹型から)樹木の色に注目する。
それらは山麓斜面や、
三宅高校のあるクレーター内(比高マイナス二~三百m)に生えているが、
山麓のものが赤茶と緑であるのに対し、
クレーター内のものはほとんど緑である。
このことは、標高が高い場所ほど火山ガスの影響が強かったことを
意味しているのかもしれない。
また、その他の広葉樹(これも樹型から判断)は緑色であるから、
針葉樹に比べてガスに対する耐性が強いのかもしれない。
以下、比較的低空から都道沿いに撮影した結果を反時計回りの順で示します。 なお註釈内容は、おおよその地名と、針葉樹の色です。
左:三宅高校付近。ほぼ緑。
中:坪田の郵便局付近。ほぼ緑(針葉樹なし?)
右:坪田の北東部。ほぼ緑。
左:三宅島空港南西部。より東側、より標高の高い部分は少し赤茶。
中:三宅島空港西~南西部。半分弱ぐらい、赤茶。
右:三宅島空港の西部。半分強ぐらい、赤茶。
左:村役場の西側。ほぼ全部、赤茶。
中:三池の西側。ほぼ全部、赤茶。
右:三池の西側。ほぼ全部、赤茶。
左:三池浜の西側。ほぼ全部、赤茶。
中:サタドー岬の上流付近。半分強ぐらい、赤茶。
右:サタドー岬の上流付近。半分強ぐらい、赤茶。
左:三七山付近。半分ぐらい、赤茶。
中:ひょうたん山付近。半分弱ぐらい、赤茶(針葉樹少ない)。
右:赤場暁の南西付近。緑色(針葉樹ほとんど無い?)
左:赤場暁付近。半分弱ぐらい、赤茶(針葉樹少ない)。
中:赤場暁の北部付近。松(?)はほとんど赤茶。
右:下馬野尾付近。??(針葉樹ほとんど無い?)
左:下馬野尾付近。半分弱ぐらい、赤茶(針葉樹少ない)。
中:砲台付近。半分弱ぐらい、赤茶(針葉樹少ない)。
右:美茂井付近。半分ぐらい、赤茶(針葉樹少ない)。
左:美茂井付近。半分弱ぐらい?、赤茶(針葉樹少ない)。
中:神着(土佐)付近。??(針葉樹少ない)。
右:神着(土佐~焼場)付近。緑(針葉樹少ない??)
ここでちょっと御蔵島に立ち寄りました (逆順に表示しているので実際には三宅高校撮影後に)。
左:神着(土佐~焼場)付近。標高が高いと赤茶?(遠くて判断困難)
中:神着の上流。半分ぐらい、赤茶。
右:神着(東京都三宅支庁)半分弱ぐらい、赤茶。
左:神着~伊豆の上流。半分弱ぐらい、赤茶。
中:伊豆。緑(針葉樹なし?)
右:伊豆。半分弱ぐらい、赤茶。
左:伊豆の上流。半分弱ぐらい、赤茶。
中:伊豆~伊ヶ谷の上流。ほぼ緑。
右:伊ヶ谷と上流。ほぼ緑~半分弱ぐらい赤茶。
左:伊ヶ谷と上流。ほぼ緑~半分弱ぐらい赤茶。
中:伊ヶ谷と上流。ほぼ緑~半分弱ぐらい赤茶。
右:伊ヶ谷と上流。ほぼ緑~半分弱ぐらい赤茶。
左:阿古の電波塔付近。ほぼ緑(針葉樹少ない?)
中:阿古。ほぼ緑(針葉樹少ない?)
右:阿古郵便局付近。半分~半分弱ぐらい赤茶。
左:大路池の南西。半分~半分弱ぐらい赤茶。(広葉樹も一部赤茶?)
中:大路池の南西。半分~半分弱ぐらい赤茶。
右:大路池の南西。半分~半分弱ぐらい赤茶。
左:大路池。緑(針葉樹少ない?)
右:畜産試験場。緑(試験場の裏山はいかにも樹型が針葉樹で、緑色)。
以上のまとめ:
山麓~山腹に生えている、
針葉樹(杉)と思われる樹木の色の観察にもとづいて、
三宅島の火山ガスによる(?)ダメージの大小を推察すると、
以下のようになります。
・山頂部は概してダメージが大きい。
・山麓~海岸部のうちダメージが大きかったのは、島の東部と南西部の一部。
・同、ダメージの小さい地区は、島の南部と西部。
・中程度の地区は、北西部、北部、北東部、南東部。
もしかすると、冬の間卓越していた西風によって東山麓に運ばれた火山ガスが、 東側の樹々ダメージを大きくしたのかもしれません。
左:神津島空港に着陸。燃料補給。
(
11時27分 神津島空港に着陸、
12時49分 離陸
)
右:火山ガス観測(COSPEC)を終えた海上自衛隊ヘリも、
神津島空港に着陸しました。
島内でこの海自ヘリとすれちがいました動画(QuickTime, 約2Mb)
災対関係者を乗せるため、伊豆のヘリポートに着陸、すぐ離陸。 ( 13時01分 着陸、 13時03分頃 離陸 )
左:伊豆大島付近の海上の様子。白波は全く無し。
右:伊豆大島
左:鎌倉付近。胆沢(遠くに黒く見える)の左に富士山がうっすら見える。
視程はよくない。
右:都内。気象庁(隠れている)方向。
東京ヘリポートに着陸した後、
気象庁で報告するために自動車でここまで戻ります。
この区間の移動時間はヘリだとたった5分ですが、、。
東京ヘリポートに到着しました。
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5月14日のヘリ観測の行程メモ:
05時10分 起床
05時30分 つくばを出発
07時08分 気象庁より「本日、飛びます」との連絡
07時25分 東京ヘリポート、警視庁航空隊に入る
09時00分 離陸
09時15?分 横須賀通過
09時21~24分 海岸線を通過(今日はいつもより東よりのコース)
09時24分 城ヶ島公園を通過
09時41分 利島通過
100kt(1kt=1.85km/h)にて2000ftを巡航
09時30分頃~40分頃にかけて、遠方に三宅島の噴煙を確認。
09時40分頃から、噴煙が見えなくなった。
09時48分に、再び三宅島の噴煙を確認。
09時50分には、また噴煙が見えなくなった。
09時51分には、再び三宅島の噴煙を確認。
09時55~58分 近付いたのでほぼ連続的に噴煙を確認
10時06分 伊豆のヘリポートに着陸
10時09分 離陸。三宅島上空で観測開始
10時51分 三宅島上空を離脱。御蔵島にむかう
10時57分 御蔵島のヘリポートに着陸。搭乗。
10時58分 離陸。再び三宅島上空に向かう
11時04分 三宅島上空に到着。観測再開
11時14分 三宅島上空を離脱。神津島に向かう
11時27分 神津島空港に着陸
12時49分 離陸
13時01分 三宅島、伊豆のヘリポートに着陸
13時03分頃 離陸。
13時15分 利島通過。
13時36~40分 海岸線通過
13時46分 横浜通過
14時00分 東京ヘリポートに着陸。気象庁に向かう。
??時??分 気象庁に到着。結果報告など。
16時00分 報告終了。竹橋の地下で昼食。下司氏と色々議論。
17時15分 つくばに向け、出発
18時30分頃 つくばに到着、官用車の返却。