三宅島空撮:2001年3月30日

                   by A.Tomiya (2001/04/04改訂)
現在,気象庁のアレンジにより,毎週月・水・金の3回,三宅島の上空にヘリコプターを飛ばしており,
大学および産業技術総合研究所(旧・地質調査所(※))のスタッフがこれに搭乗して観測にあたっています.
原則的に,月・水は警視庁,金は消防庁のヘリが飛んでいます. (※) 地質調査所は2001年4月より「産総研 地質調査総合センター」に組織改編しました.
  また,2001年9月現在,ヘリ観測頻度は週に1回となっています.(2001/9/25補足)

ここでは,3月30日に東宮により撮影された写真の一部を公開いたします.
写真をクリックするともっと大きな写真(90-170KB程度)が御覧いただけます.
なお,写真の無断2次使用は御遠慮下さいませ.
<データ>
観測時間  :2001年3月30日(金) 9:45〜10:15(三宅島での滞空時間)
ヘリコプター:東京消防庁「かもめ」
搭乗研究者 :大野希一(日大)・東宮昭彦(地調)

  9:01 東京ヘリポート離陸
  9:45 三宅島上空到着(観測開始)
 10:15 三宅島上空出発(観測終了)
 10:34 利島ヘリポート着陸(消防庁による写真撮影業務があったため)
 10:41 利島ヘリポート離陸
 11:22 東京ヘリポート着陸


○概況

(1) 南より遠望した三宅島・雄山(おやま).今回は真っ白な噴煙がカルデラ内部に充満していた.
(2) 大量の青白い火山ガスが三宅島空港方面(東方)へ流れていた.
(3) 火山ガスはそのまま海上を延々と流れていく.
(4) 北東より見た雄山.

DSCN0774s.JPG(1) DSCN0772s.JPG(2) DSCN0773s.JPG(3) DSCN0779s.JPG(4)

○カルデラ(陥没火口)内外の様子

以下,a,b,c...の符号は,特徴的な地形に対し宮城さんが付けた符号です.
これらの符号が実際の地図上のどこに対応するかについては,下記ページをご覧下さい:
 → 三宅島のカルデラリム・インデックス・マップ

Part 1(北東〜北北西側)
(5) 北東側
(6) 北北東側(スオウ穴付近)
(7) 北側(a,v付近)
(8) 北側(b付近)
(9) 北側(v,c,c',d,e付近)
(10) 北北西側(c,c',d,e付近)
(11) 北北西側(c,c'付近アップ).泥が多く見えているが樹木は残っている.
 → 3/26の宮城さんの写真とも比較してみて下さい.特にこの写真
(12) 北北西側(c,c',d付近).この辺りの植生はふさふさ.
(13) 北北西側(c',d,e付近)

DSCN0762s.JPG(5) DSCN0765s.JPG(6) DSCN0761s.JPG(7) DSCN0757s.JPG(8) DSCN0766s.JPG(9) DSCN0767s.JPG(10) DSCN0768s.JPG(11) DSCN0788s.JPG(12) DSCN0787s.JPG(13)

Part 2(北西〜南側)
(14) 北西側(d,e付近).カルデラ内部は噴煙のため見ることができない.
(15) 西北西側(e,f付近).fの手前の尾根に「西縁のひび割れ」(3/9星住氏報告)があるはずだが,よく分からなかった.
(16) 西側(g,h,i,j付近)
(17) 西南西側(j,k付近)
(18) 西南西側(j,k,l,o付近)
(19) 南西側("m","n"付近).後述「m,n付近の崩落と雁行割れ目について」を参照.
(20) 南側(p,q).去年からある「亀裂」がまだ見えている.

DSCN0769s.JPG(14) DSCN0760s.JPG(15) DSCN0777s.JPG(16) DSCN0776s.JPG(17) DSCN0759s.JPG(18) DSCN0784s.JPG(19) DSCN0770s.JPG(20)

#南〜東〜北東側は風下に当たり噴煙をかぶるため観測できなかった.

○"m","n"付近の崩落と雁行割れ目について

3月9日(星住氏観察)までは少なくとも存在していたm,nは,「崩落」のために現在は消滅している. また,崩落箇所に連なるように「雁行割れ目」ができている.
これらの崩落や雁行割れ目がいつのものなのか調べたところ,「3/9〜14の間」であるということが分かった.なお,3/12のヘリ観測は中止になっているので,これ以上時期を絞り込むのは困難と思われる.
また,3/14から3/26の間にも雁行割れ目は成長(幅・長さの拡大)しているようだ.

(21) 3月30日に撮影した"m","n"付近.(23)の写真(1月29日に宮城氏撮影)と比較すると,カルデラ縁の一部が崩落して無くなっているのがわかる.
 → 緑色で丸印をつけた4つの岩塊の位置やその近くの雨裂の位置等を目安に比べてみて下さい.
(22) 「雁行割れ目」のアップ((21)の写真の一部拡大).
(23) 参考:1月29日に撮影されたm,n付近の様子.宮城氏撮影の写真に加筆.

DSCN0784s.JPG(21) DSCN0784xs.JPG(22)
miyagi_lmn_010129s.jpg(23)

☆この場所の変遷の様子☆
 3月 9日:星住氏@地調の観察=m,nは存在している(1月29日と同様)
 3月12日:(悪天のためヘリ観測中止)
 3月14日:大湊氏@東大の観察によるこの写真=m,nは消滅(崩落).雁行割れ目も出来ているが,割れ目は現在より小さい.
 3月26日:宮城氏@地調の観察によるこの写真=雁行割れ目が拡大している
 3月30日:東宮@地調の観察(本ページ)によるこの写真=3月26日からはあまり変わっていない

○その他

(24) 雄山北東山麓の泥流被害の様子((4)の写真の一部拡大).林道の一部が流されている.この被害は3月19日(大野さん@日大による観察)よりも以前のものであるようだ.
DSCN0779xs.JPG

(25) 帰還時に立ち寄った利島.
DSCN0789s.JPG

(26) 今回お世話になった東京消防庁のヘリ「かもめ」.東京へリポートにて.
DSCN0792s.JPG


1.概況

雲底1000m程度の雲があったが観測に支障無し.
真っ白な噴煙が大量にカルデラ内部に充満していて,カルデラ内部はまったく見えず.
青白い火山ガスは相変わらず大量に出ている.

2.噴煙

真っ白な噴煙(蒸気)が大量にカルデラ内部に充満している.
そのため,カルデラ内部はまったく見えず.

噴煙高度は高々900m程度.強い西風のために高く上がれないようだ.
ときおり入道雲のようにもくもく上がるが,それでも上空の雲(雲底1000m)に
やっと届くかどうかという程度.

一方,大量の青白い火山ガスは,東(三宅島空港〜三池方面)に流下して
そのまま延々と海上をどこまでもたなびく.

3.カルデラ内部

濃密な噴煙が充満していて,カルデラ内部の観察は全くできなかった.
火口の温度測定のために赤外線カメラ(松島喜雄氏よりお借りしました)を持参
したものの,活躍できず.

4.カルデラ縁

宮城さんが3月26日に報告した“北西〜北のカルデラ外縁斜面”の変化(?)について,
今回重点的に観察した結果,樹木は消失していないことを確認.
3月26日の観測では光の加減等でいつもと違った様子に見えただけのようである.
→宮城さんのページに詳しい経緯の説明があります.

雁行割れ目やその他の亀裂については3/28からの変化は認められず.
ただし,西側(地点f付近)の亀裂が目立たなくなっているようだ.

5.山麓・山腹

今回は山麓はあまり見ていない.
スオウ穴の北東で林道が泥流のために約100mに渡って破壊されていた(大野さん@日大による指摘)のが顕著であるが,
この被害は3月19日(大野さん@日大による観察)よりも以前のものであるようだ.

6.その他〜飛行コース・窓オープン等について

飛行コースは,カルデラ縁に沿って北東−西−南を4往復行なった.
観測の際にはカルデラ縁にかなり近付いていただけた.

また,飛行中は窓(40cm×40cm程度の面積)を開放していただいた.
これにより,窓ガラスの反射によるコントラストの低下に悩まされずに撮影を行なうことが出来た.

なお,噴煙の風下には近付かなかったため,窓開放中もガス臭はまったくしなかった.


以上

独立行政法人・産業技術総合研究所・地質調査総合センター
 地球科学情報研究部門・マグマ活動研究グループ 東宮昭彦(三宅島火山噴火緊急観測班)
  E-mail:a.tomiya@aist.go.jp
  http://staff.aist.go.jp/a.tomiya/tomiya.html

Created:Apr,3,2001