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日本の火山と火山地質図「桜島火山」
下司信夫(活断層・火山研究部門)
SAURAJIMA-VOLCANO written by Nobuo Geshi (Geological Survey of Japan, AIST)
鹿児島市から見た桜島。常に噴煙をあげている桜島は鹿児島のシンボルです。
桜島火山は鹿児島県にある日本でも最も活発な活火山の一つです。桜島火山は鹿児島湾の最奥部を占める姶良カルデラの南縁部に生じた安山岩の成層火山で、活発な活動を続ける南岳火口は鹿児島市の市街地からわずか10kmの距離にあります。
桜島火山は、約26000年前に姶良カルデラで発生し、南九州一帯に「シラス台地」とよばれる火砕流台地を形成した巨大噴火の後、姶良カルデラ南縁の海底で成長をはじめました。そして、およそ13000年前ごろには海面上に姿を現したと推定されています。桜島周辺に堆積した噴出物から、桜島火山は26000年前以降およそ17回の大規模な噴火を繰り返したと推測されています。このうち、最近4回の大噴火はそれぞれ歴史記録のある天平宝字(西暦764年)、文明(1471年)、安永(1779年)、大正(1914年)の4回の大噴火に対応します。このほか、より規模の小さい噴火が大噴火の間に数多く繰り返されてきたことが、噴出物の地質調査や歴史記録の調査によって明らかにされてきています。記録に残されている「天平宝字」「文明」「安永」「大正」の大噴火はすべて山腹噴火で、多量の軽石が噴出し、また溶岩が流出し、火砕流も発生しました。安永の噴火では大量の軽石の噴出に続いて溶岩が流出し、海底に噴出・流入した溶岩流によって海底が隆起して「安永諸島」と呼ばれる島々が出現しました。
最新の大噴火である大正噴火(1914年)は、20世紀に日本列島で発生した噴火の中では最大規模の噴火の一つで、1km3を超えるマグマが噴出しました。大正噴火では桜島山頂をはさんで東西に噴火口が開き、そこから大量の軽石が噴出し風下の村落に壊滅的な被害を生じました。また、火砕流も発生しています。さらに東西の山腹火口からは大量の溶岩が流出しました。このうち東側に流れ下った溶岩流は大隈半島との間の海峡を埋め立て、桜島は大隈半島と陸続きになりました。また大正噴火では噴火の最中に大きな地震が発生し、鹿児島市内を中心に大きな被害を生じたことが知られています。大正噴火では噴火直後に科学的な調査が行われ、噴火に伴って鹿児島湾北部の姶良カルデラを中心とする顕著な地盤の沈降が起こったことが見いだされました。その後1946年には東山腹から主に溶岩流を流出する山腹噴火が発生し、南東山麓の集落が溶岩に埋没しました。
桜島南岳の山頂火口では、1955年以降今日に至るまで「ブルカノ式」とよばれる爆発的な噴火が断続的に続いており、火山灰や火山礫、噴石などの噴出物による被害や、爆発時の空振による被害も生じています。また、火山ガスの被害や二次災害としての土石流などの被害も生じています。現在、爆発的噴火の危険のため山頂火口から2km以内は立入り禁止になっています。
なお、2006年6月4日より、これまで噴火を繰り返してきている山頂火口のほかに、東山腹の昭和火口からの噴火が始まっています。
東側上空から見た桜島火山。
噴煙を上げている深い縦穴火口がある左側の火山が南岳、右側の浅い火口を持つ火山が北岳です。
たびかさなる噴火で植生が育たず、噴出物でおおわれた山腹は雨によって浸食され、深いガリーが多数発達しています。
海上保安庁機から撮影。鹿児島大学小林哲夫氏提供。
地質調査総合センター発行「桜島火山地質図」 1:2.5万。
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火山地質図~火山のおいたちをさぐる
火山地質図とは、日本の主な活火山を対象に、その火山の噴火史に注目して作られた地質図です。火山地質図には、溶岩や火砕流といった火山噴出物の分布や、噴火口の位置など火山の構造に関する情報が記載されています。また、その火山の形成史や活動に関する解説が付けられています。これまでに全国11の活火山の火山地質図が出版され、防災や火山研究の基礎データとして利用されています。